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セルフ雑記帳

和田 信治

vol.869『二軍監督』

エンタメ・スポーツ

2021-11-01

 久々にプロ野球の話を。セ・リーグはヤクルト・スワローズ,パ・リーグはオリックス・バファローズがいずれもデッドヒートの末優勝した。両チーム共に昨年・一昨年と最下位だった。今年もシーズン前の下馬評は決して高くなく,まさかという感じだが,バファローズについては,2年ぐらい前から,何でこのチームが最下位なんだ?と不思議に思っていた。

 投手陣には 山本由伸 ・山岡泰輔というダブルエースを擁し,野手では吉田正尚という三冠王級の選手がいる。かつて,野村克也は「優勝するための絶対条件はエースと4番」と言っていたが,バファローズにはどちらもトップクラスの選手がおり,これでAクラスすら入れないのであれば監督が無能であるとしか言いようがないと,野球の話になるたびに主張していた。

 今シーズン,故障の山岡に代わり,高卒2年目の宮城大弥という左腕が救世主のごとく現れた。しかし,優勝の最大の原動力となったのは,昨年まで5年間で9本しかホームランを打っていなかった杉本裕太郎が覚醒,リーグトップの32ホーマーを放ち,3番に繰り上がった吉田の後ろにどっかり座ったことだ。昨年・西村監督がシーズン途中で更迭されたあと,急遽あとを任された二軍監督・中嶋 聡が,二軍にくすぶっていた杉本に,「俺と一緒に一軍に行くぞ」と声をかけたことが今年の大ブレークに繋がった。2015年入団の30歳。ドラフト順位は何と10位。


 一方のスワローズ。3度のトリプルスリーに輝く天才・山田哲人と若き長距離砲・村上宗隆を中心とした打撃陣は脅威ではあったが,何せ投手陣はポンコツとしか言いようがなく,今年も横浜ベイスターズ,広島カープと三つ巴の最下位争いをするだろうと見ていたのだが,何とまあ優勝してしまった。昨年から指揮を執る監督・高津臣吾は投手陣の底上げに成功,防御率を前年より1点超改善させた。

 とはいえスワローズに“エース”は存在しない。二桁勝利を挙げた投手がゼロの投手陣の屋台骨を支えたのは,清水 昇と今野龍太という二人のセットアッパーだ。清水は72試合,今野は63試合と投げまくり,リーグ最多30試合の逆転勝ちの立役者となった。特に今野は2013年ドラフト8位で楽天イーグルスに入団,鳴かず飛ばずで戦力外となったところを一昨年スワローズに拾われての大変身。野村ならぬ“高津再生工場”の成功例となった。


 近代野球においてチームの勝敗を決するのは監督の采配だと思う。ドラフト制度によって戦力が均等化しつつあるプロ野球。監督の力量次第で,優勝も最下位も紙一重だ。むかしから“名選手 名監督にあらず”とよく言われるが,実際には名選手が名監督にもなるケースは少なくない。しかし,近年注目されているのは「二軍監督」の存在だ。


 中嶋も高津も就任前は二軍監督だった。若い選手と共に汗と土にまみれてきた経験があるからこそ,選手との信頼関係も強く,ひとりひとりの特性も熟知している。とりわけ,チームが低迷している時こそ,若手の育成に長けた二軍監督を昇格させるべきかもしれない。実際,常勝軍団だったソフトバンク・ホークスも主力選手が世代交代の過渡期を迎えており,チームの再生を11年間二軍でコーチ・監督を務めてきた藤本博史に託す。

 …と,よそのチームの監督のことをあれこれ書いてきたが,我がジャイアンツはどうかといえば,来期も原 辰徳が指揮を執るものの,「ポスト原」を見据えて,二軍監督・阿部慎之助を一軍作戦コーチに起用するそうだ。コーチ経験無しにいきなり監督になって失敗した高橋由伸の轍を踏まぬようにと慎重に事を運ぶようなのだが,そもそも二軍監督としての実績は?この2年間,若手の育成というよりは,大枚はたいてかき集めた挙句に役に立たなくなった「元エース」「元4番」のお守りをさせられていただけのような感じもする。


 ジャイアンツは今年,勝率5割を切りながらも3位となり,クライマックスシリーズに出場する。みっともないから辞退すべきところだが,恥を忍んで出場するのであれば,いっそのこと選手は全員25歳以下とし,采配は阿部監督代行に任せてみてはどうだろうか。それぐらいのことをしないと,巨人再建はままならないと思う。

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