セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.872『石油高騰は試金石だ』

オピニオン

2021-11-22

『19日夕から20日早朝まで東京商品取引所で行われた中東産原油の先物夜間取引で,1㌔㍑当たりの指標価格が一時2730円急落し,10月8日以来約1ヶ月半ぶりの安値となる5万1640円を付けた。下落率は5%に及んだ。岸田政権が米政権と原油高対策で協調し,石油備蓄を民間に放出するとの見方が市場関係者の間で広がり,供給不足に伴う値上がり予想が後退した』─。(11月20日付 「共同通信」)

 石油備蓄には国が所有する国家備蓄と,石油会社に法律で義務付けている民間備蓄があるが, 9月末時点で国家備蓄は145日分,民間備蓄は90日分あり,これを一部放出することにより,最近のガソリン等の高騰を抑えようということなのだが,本来,備蓄を取り崩せるのは紛争による供給不足や災害時などに限られており,価格を下げるための放出は想定されていない。国民からの要求なら,石油備蓄法をタテに退けるところだが,ほかならぬ米国大統領からの要請とあらば,法改正してでもこれに応じなければなるまい。

 仮に放出されるとしてもその数量や期間は限定的であり,「焼け石に水」との見方もあったのだが,市場が早々と反応し,価格下落へと転じ,どうやら取り越し苦労に終わりそうだ。しかも,欧州では再びコロナ感染者数が拡大しており,経済活動の停滞は避けられないとの見方が強まっているため,原油高騰のヤマは超えたとの観測も出ている。そうなれば,すでに「愚策」「拙策」と散々な言われ様の,例の経産省による補助金支給も,やらずに済むかもしれない。

 レギュラーガソリンの全国平均が1㍑170円を超えた場合は,石油元売各社に最大5円/㍑を支給するとのことだったが,恐らくそこまで行く前に値下げに転じるだろうというのが,大方の業界人の見方。そもそも,ガソリン価格上昇抑制のために,元売り事業者に補助金を出すというのは世界的にみても極めて異例なことで,元売りで価格を抑えたとしても,GSなどでの価格設定に強制力はないし,強制すれば独禁法にも抵触しかねないため,消費者にどれほどの恩恵があるか疑問視されている。

 もし,この施策が発動されたら,本当に仕入れ価格は5円下がるのかしらん。ネットでは,元売りが下げても,GSがピンハネするんじゃないかなんて言われているが,少なくとも愛知県ではその心配は無いと思う。19日現在愛知県のガソリン平均価格は160.7円(「gogo.gs」調べ)。我が日進市では170円はおろか160円で売っているGSもない。こんな調子ですから,日進市にお住まいのドライバーのみなさん,すでに「先行値下げ」を実施しておりますので,ご理解を賜りたく存じます…。

 ただ,前にも書いたが,今回の原油高騰は人類が「カーボンニュートラル」を達成する本気度を試すよい機会ではないか。ガソリンが200円になったから,灯油が100円になったからと音を上げているような人は,「カーボンニュートラル」なんて語る資格はない。これからは,ガソリンは高級品・希少品となることを甘受しなければいけないのだ。

 例えば“21世紀のジャンヌ・ダルク”グレタ・トゥンベリ女史に言わせれば,温暖化を今すぐに止めないと,異常気象に歯止めがかからず,地球はまもなく人間の住めない惑星になってしまう。だから,人間が地球から自然を収奪するのをやめなければならない。具体的には,石炭火力発電を即刻停止させろ,ガソリン車とディーゼル車に乗るな,飛行機や豪華船に乗るな,メタンガス発生の温床は酪農であるから肉は食べるな,新品の服は買うな─。つまり,豊かさを捨てろということだ。

 おしゃれして,ハンバーガーほおばっている“坊ちゃん嬢ちゃん”が,「地球を救え!」なんて叫んでいるのを見ると,どこまで分かって言っているんだろうと感じる。人類は化石燃料なしに文明を維持することは不可能だと私は思う。国際会議で「段階的」とか「持続的」などと言葉遊びを繰り返しているあいだに,地球環境は確実に劣化してゆくだろう。下手をすると,私の孫 (いまのところいないけど) が大人になる頃には,おじいちゃんがGS経営をしていたなんてことを人に知られたら,罪人呼ばわりされるような時代になっているかもしれない。ぼんやりとそんな事を考えながら,私はきょうも生活のために化石燃料を販売している…。 

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