セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.876『減収増益』

オピニオン

2021-12-20

 『新型コロナ関連の経営破たん(負債1000万円以上)の100件超えが2月から続いており,9月から11月までは3ヶ月連続で月間最多を更新した。12月も17日時点で104件と11ヶ月連続で100件を上回った。2021年の倒産件数は同日現在で1648件に達し,2020年の843件に比べ約2倍に迫っている。

 国内の新規感染者は沈静化が続き,消費関連企業を中心に需要回復への期待が高まっているが,コロナ破綻が減少する気配はみられない。事業者向け給付金などの政策支援は継続される見通しだが,業績不振が長期化するなかで過剰債務に陥った企業も目立ってきた。コロナ関連破たんは“息切れ型”による脱落を中心に,高水準で推移する可能性が高まっている』─12月17日付「東京商工リサーチ」。

 昨年の倒産件数は過去20年でもっとも低い水準だった。つまり,税金を投入して,コロナがなくても普通に潰れていたであろう会社をも金融機関に追い貸しさせて生きながらえさせた昨年の反動が今年になって出てきたようだ。確かにコロナ関連融資など資金繰り支援は倒産の抑制に繋がったが,過剰債務にも繋がり,いわゆる「ゾンビ企業」がどっと増え,コロナ禍が2年目に入り返済が始まると共に,それらの企業が次々に倒産していくという構図。来年以降,一層本格化すると見られている。

 新たな変異株「オミクロン」がいよいよ日本にも入り込んできた。今後,感染者は拡大してゆくだろう。年末年始の旅行や宴会などに影響をもたらすことは間違いない。飲食や観光に携わる人たちがどれほど不安を感じているか想像に難くない。さらに,やや落ち着きを取り戻したものの,原油価格は高止まりで推移しており,原材料費や光熱費の値上がりが企業収益を圧迫する。一方,せっかく注文を受けても,半導体やコンテナなどの不足でみすみす商機を逸し,切歯扼腕している業種も少なくない。

 GS業界についていえば,「東京商工リサーチ」のデータによると,2,867社の最新期(2020年4月期以降)売上高は5兆3,368億円で前期比で約82億円,13.2㌫とガクンと落ちた。コロナ禍での外出自粛などが影響したことは間違いない。一方,最新期の純利益は780億円(同23.8%増)となり,2,867社のうちのうち約半分が増益だった。やはり昨年の3~4月の原油価格の大暴落による収益増が大きく寄与したのだろう。

 ここに今後GS業界が目指すべき方向性が見える。つまり「減収増益」。先日,トヨタがEVに本気で取り組むことを表明したことで,この先,GS業界の売上げはジリ貧になってゆくことが決定的となった。それに抗って「増収」を目指そうとするなら安売りを続けるほかない。将来性のある業界なら,一時的な「増収減益」は戦略のひとつとみなされるかもしれないが,もうGS業界にバラ色の未来はない。この業界では,業歴30年以上の老舗企業が約9割を占め,一方で10年未満は0.2㌫と,新規参入や新陳代謝がほとんどないことがその証左だ。人間で言えば「壮年期」はとうに過ぎ,「後期高齢者」の段階に入りつつあると思う。

 コロナが収束し,以前と変わらない生活に戻ることを望むのは非現実的だ。ましてGS業界は。スイスの経済学者で「世界経済フォーラム」の創設者クラウス・シュワブは,「パンデミックは,いまの世界を見つめ直してリセットする,またとない機会だ。このチャンスを逃してはいけない」と述べている。つまり,せっかくコロナがこれまで変えたくても変えられなかった生活様式や経済構造を破壊してくれたのだから,その瓦礫の上にまた同じものを建ててどうする,もっと良いものを建てようじゃないか,ということ。同感だ。

 GS業界も,このまま老いさらばえて消滅するか,来るべきカーボンニュートラル時代に,「GS」から「ES」(Electric Station)へと生まれ変わって,プレーヤーとして参加するか─。そのための鍵は,「増収」の夢を捨てて,「増益」志向の業界へと変貌し,いまから“原資”を積み立てておくことだと思うのだが…。

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