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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.88『三原魔術』

エンタメ・スポーツ

2005-12-12

 今年のプロ野球は、ボビー・バレンタイン率いるロッテ・マリーンズに席巻された一年であった。私は、パ・リーグのプレーオフ制度を即廃止すべきとの意見の持ち主だが、それを置いても、今年のマリーンズの戦いっぷりは見事だった。その立役者は、やはり、ボビー・バレンタインその人であろう。メジャー仕込みの斬新な采配は、「ボビー流」なる言葉も生み出し、早速、その人心掌握術を分析した本が書店を賑わしている。どんな人が買うかはすぐ見当がつく。そう、日本の経営者や管理職は、武将や軍人と並んで野球の監督を自分の姿と重ね合わせるのが本当に好きなのである。(私もその一人)

 では、プロ野球史上最高の監督はだれか─。前人未到の9連覇を達成した川上哲治や最多勝監督の鶴岡和人、ⅠD野球の野村克也、熱血監督・星野仙一、ミスタープロ野球・長嶋茂雄など、ひいきチームもあいまって喧々諤々の論議になりそうだが、私の勝手な規準を述べさせていただければ、「セ・パいずれのリーグでも優勝し、なおかつどちらのチームも日本一にした監督」ということになる。この規準に照らしてみると、該当するのはたったの三人─水原茂(巨人4回、東映1回)、広岡達郎(ヤクルト1回、西武2回)、そして三原脩である。

 分けても、「三原魔術」と讃えられた三原の手腕は群を抜いている。九州のおんぼろチーム西鉄ライオンズを率いて宿敵・巨人を三年続けて日本シリーズで倒し(’56~’58)、セ・リーグでは万年最下位の大洋ホエールズをいきなり優勝(’60)させ、日本シリーズでも大毎オリオンズを4タテで下した。既存の戦力の潜在能力を引き出す一方で、あっと驚く奇襲戦法を仕掛けて勝利をものにするその卓越した采配は、いまやプロ野球史上の“伝説”となっている。

 弱小チームを優勝チームに変身させる。圧倒的に強力な相手を巧妙な戦術で倒す。乏しい戦力を活用して勝利を得る─これらは、セルフスタンドの経営にも通じるものである。例えば、販売量が頭打ちの赤字スタンドを、セルフ化によって売上げ2倍、3倍増へと導き、黒字スタンドに変身させる。あるいは、セルフ化によって既存戦力を有効活用し、低迷していた油外収益を大幅アップさせる。しかも、それらを実現するにあたっては、投資コストも運営コストも出来るだけ抑え、何倍もの規模を持つ大型量販店と収益面では伍してゆくことができるとなれば、実に痛快ではないか。

 手前味噌な話だが、先日、私がコーディネートさせていただいたあるセルフスタンドの社長から、「いや~和田さん、ローコストセルフにして良かったですよ~」との感謝のお電話をいただいたが、それは百キロにも満たなかった月間販売量が、「ウン百キロ」を見込めるまでになったことの喜びと共に、当初予算を下回る額でそれを実現できたこと、簡単な仕組みのため客からも好評だとの理由からであった。「それに、従業員もゆとりができ、お客さんに明るく接するようになったんですよ」─。

 自分たちでは無理だと考えていた勝利を勝ち得る可能性が出てきた時、経営者のみならず、従業員も積極性を発揮し、それまで眠っていた能力や技術を発揮するようになる─これぞまさに、「三原魔術」「ボビーマジック」に通じるものではないだろうか。

 大きいものが勝ち、力のあるものが生き残るとは限らない。知将三原の勝利の方程式の一つに、一流選手ではないが、きらりと光るものを持つ選手、名づけて「超二流選手」をいかに活用するかがカギであるとの戦術がある。ローコスト・セルフシステムは、派手さはないが、こつこつと得点を稼ぐ、あるいは失点を防ぐ、「超二流」のシステムであり、起死回生の逆転劇を生む可能性を秘めた、ガソリンスタンドの「魔術」であると信じている。

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