セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.881『自転車無法国』

オピニオン

2022-01-24

 昨年4月,東京都板橋区内で「ウーバーイーツ」の配達員が自転車で高齢者をはねて死亡させた事故があり,東京地検はこの程28歳の配達員の男を業務上過失致死の罪で在宅起訴した。自転車事故に同罪を適用するのは極めて異例なことだという。

 ウィズコロナ社会の申し子とでもいうべき「ウーバーイーツ」。日進市のような田舎ではほとんど見かけないが,名古屋市内ではあちこち走りまくっている。報道番組で,仕事がなくなったフリーランスの人などが生活のためにウーバーの配達員をしている様子を見たことがあるが,肉体的にキツイだけでなく,精神的にも大変なようだ。

 配達員を追い詰める要因に,ウーバー社の報酬制度があるとの指摘もある。ウーバーイーツには,一定期間内に指定件数を配達すると追加報酬が支払われる「クエスト」という仕組みがあり,この制度があることによって配達員が急いで配達し,件数を稼ごうとすることで事故を誘発させているというのだ。板橋区の事故も,雨の降る中,配達員はスピードの出るロードバイクで時速20~25㌔で走行していたという。東京地検はこの態様を重視し,「業務上」の過失致死として起訴したという。

 オミクロン株の爆発的な感染により,宅配サービスはまたまた活況を呈している。企業が,安全面より利益を優先するシステムを見直さない限り,これからも配達員による事故は増えるだろう。また,一般にも,電車やバスなどの“密”を避けることができるうえ,運動不足の解消やカーボンニュートラルにもつながる自転車ブームが起こりつつある。自転車部品大手の「シマノ」が昨年7月に発表した中間決算は売上高,当期利益とも過去最高を更新した。

 いまのところ,自転車による交通事故件数に際立った増加はないものの,コロナ禍で交通事故総数が減少する中で,その割合,とりわけ対歩行者事故の割合は増加傾向にある。たまに,名古屋の繁華街を歩いていると,歩行者を縫うようにして自転車が歩道を走り抜けてゆく。危ねぇ~と感じるし,信号無視して走っている奴や,スマホを眺めながらこいでいる奴を,まあまあの頻度で見かける。ジコって怪我したり死んだりするのが,自転車本人だけならそれも勝手だが,歩行者が巻き添えを食ったらたまったもんじゃない。


 しかし,自転車に詳しいジャーナリストによれば,多くの日本人は,心の奥底でなんとなく「自転車は歩行者に毛の生えたモノだろ,だから歩道だよ」と思っているという。そのため,“車道チャリ邪魔”,当の自転車は“ドケドケ歩行者”という,先進国はおろか途上国でもあり得ない状況になってしまっており,その一番の要因は,高度成長期から一貫して自動車最優先の交通インフラを進めたことにあるのだと。昨今,宅配サービスで生じている自転車のトラブルの多くも, 永年,交通弱者を脇へ追いやってきた政策によって引き起こされたといえるかもしれない。

 まあ,いまさらどうにもならん。日本中の道路に自転車専用レーンを設けるなんて不可能だ。せめて,車道は自動車だけのものではないということをクルマ側が認識するしかない。そのうえで,自転車は最低限の交通マナーを守ってもらいたいものだ。個人的には,車道を走る自転車には十分注意して運転しようと思う。そのためにもイライラしないよう,穏やかな気持ちを保って運転したい。いまだ150円台で売る“GS無法地帯”を走行していたとしても…。

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