セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.882『有り難みナッシング』

GS業界・セルフシステム

2022-01-31

 『原油価格の高騰を受けた,政府によるガソリン価格抑制策が27日,始まった。補助金が支給されるのは石油元売り業者が対象。給油所の店頭価格に反映されるかは不透明で,値下げされる場合も時間差が出そうだ。早くから政府支援策の決定が伝えられたことで,店頭では利用者から「値段が下がっていない」などの苦情が寄せられ,困惑が広がる。石油商業組合連合会は「制度はあくまで卸価格が上がらないようにするもの。各社が判断する店頭価格を値引きするものではない」と注意を呼びかける。業界では「苦情を受けるのは現場の店頭だ」という政府対応の複雑さを疑問視する意見もある』─1月27日付「産経新聞」。

 今回の制度は,ガソリン価格が天井知らずで上がるのを抑制するための措置で,下げるためのものではない。そこのところがわからず,「ニュースできょうから3.4円下がるといってたじゃないか!」と文句を言ってくるお客様がいらっしゃるということなのだろう。しかし,27日から石油元売は2.5円を上げたうえでの3.4円値引きなので,実際に下がったのは0.9円。小売店にとっては“スズメの涙”だ。しかも,名古屋市や日進市では,170円台の価格看板などほとんど見かけない。たまに見かけるGSは,見るからに法人相手の店舗で,「現金客は面倒くさいから来ないでちょうだいね」的に170円台を表示している。

 一方,日進市に限って言えば先週あたりにようやく160円台の看板が掲げられるようになったところで,会員価格やら何やらで実質まだ150円台。テレビで170円台の看板を見ると,「ウチもそれぐらいで売れたらええな~」と羨ましがっているという状態。できることなら,もうあと少し値上げさせてもらいたいぐらいなのだ。ちなみに今週も仕入れ価格は値上がりしそうで,補助金入れても“行って,来い”だとのこと。そのあたりの実情が理解されないまま,GSが補助金をピンハネしていると言われるのは甚だ不本意である。

 しかし中には,この機に安売り拡販を目論むGSがあるのも事実。例えば,広島県三原市で28日にオープンしたPBスタンドが,先着20名限定でガソリンを市内実勢価格の半額の75円/㍑で販売し,その後も2月8日まで150円で販売するとのこと。まあ,インパクトを狙ったオープン価格だから不当廉売にはならないのだろうが“ようやるわ”という感じ。周辺のGSはいい迷惑だろうが,冷静に対応するしかない。恐らく,全国各地で「補助金」というワードに悪乗りした価格が出てくることだろう。

 オミクロン株の感染拡大にもかかわらず,世界経済は急速に回復している。英米をはじめとする主要国は制限を撤廃し,経済優先の「withコロナ」の道を選択した。中国は力ずくで「zeroコロナ」を推し進め覇道を突き進む。日本だけが,どっちつかずの中途半端な政策を続けているように見える。今回の補助金も然り。案の定,ネット上での反応は“有り難みナッシング”“二重課税ヤメロ”“トリガー条項発動せよ”といった意見ばかりだ。

 効果的な経済対策を打てずにもたついているあいだにも新たな危機が。ロシアが10万を越える兵力をウクライナ国境に展開させ,緊張が高まっている。軍事演習時とは異なり,攻撃部隊だけでなく,施設や兵站や医療などの部隊も配置を完了させているとのことで,軍事専門家は「今回はガチの戦闘体制だ」と危惧している。米国との交渉が決裂すれば,北京五輪が閉幕する2月20日以降に戦端が開かれるのではないかと。

 石油業界にとってはまさに悪夢だ。中東地域が戦場ではないので,影響は限定的と見る向きもあるが,ロシアがパイプラインの蛇口を閉めれば,欧州諸国のエネルギー事情は逼迫,中東産原油の値上がりは必至だ。最大5円とされている今回の補助金など吹っ飛んでしまうだろう。もし,そんなこんなでガソリンが200円台になったらどうするんだろう。キャッシュレス決済の手数料はリットルあたりナンボ?今度こそ「暫定」改め「特例税率」を停止させざるを得なくなるかも。コロナ対策にしてもそうだが,この国は尻に火が付いてからでないと手を打とうとしないし,打ち出した頃には大抵後手に回っている。

 

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