セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.885『覇権主義』

政治・経済

2022-02-21

『バイデン米大統領は18日,ロシアのプーチン大統領がウクライナへの侵攻を決めたかどうかを記者団に問われ「現時点で彼が決断したと確信している」と述べた。一方で「ロシアはまだ外交を選択できる。緊張緩和のため交渉のテーブルに戻るのは今からでも遅くない」とも呼びかけた』─2月19日付「日本経済新聞」。

 来週のいまごろは戦争が勃発しているかもしれない。もし,ロシア軍がウクライナに大規模に侵攻した場合,首都キエフは2日以内に陥落し,最大で5万人の市民が死傷するとアメリカの情報機関は分析しているそうだ。しかし,バイデン大統領はウクライナに米軍を派遣することはないと明言している。ウクライナは米国の同盟国ではなく,防衛義務はない。また,去年8月にようやくアフガンから撤退したばかりで,いつ終わるとも知れない戦争に巻き込まれたくない。そして,何よりも,米露が軍事的に直接対峙すれば核戦争にエスカレートしかねない─。

 とはいえ,ロシアに好き勝手にさせるなら,米国のプレゼンスの低下は免れず,国民からも“弱腰”との批判を受け,今年秋の中間選挙で与党民主党がボロ負けするおそれがある。そこでバイデン大統領は,経済制裁という報復手段を取る構えだが,8年前にロシアがクリミアを併合した時にも,アメリカはロシアに経済制裁を課したものの,屈服させることはできなかった。一方,このところの原油高で,ロシアは貿易黒字を拡大させており,2ヶ月程度の軍事オペレーションであれば,戦費は3兆円程度と見られており,楽々賄えるとのことだ。

 そんなわけで,プーチン大統領は女子フィギアと同様,世界中からどれほど白眼視されようとも,覇道を突き進む決意だろう。来年のいまごろには,ドニエプル側を挟んで「東ウクライナ」と「西ウクライナ」という二つの国が存在しているかも。それは日本にとっては遥か東欧での出来事ではあるが,仮にロシアが領土拡大に“成功”すれば,次は中国が東シナ海での現状変更に動き出すと見られている。そうなると,もはや他人事ではなくなってくる。

 譚 璐美 (たん・ろみ)という国際政治ジャーナリストによれば,中国は清朝時代に列強に奪われた領土を取り戻そうという野望を抱いており,その拠り所としているのが,国民党政府時代の1930年代に出版された,「国恥地図」なるものだというのだ。その地図によれば,台湾や沖縄は言うに及ばず,朝鮮半島も,マレー半島も,カザフスタン,アフガニスタン,モンゴルなど近隣18ヶ国は,み~んな元は中華民族の領土だったということで,いまの中国の面積の2倍を超える広さなのだという。経済大国となったいまこそ,これらの領土・領海を奪い返すべきだと中国は本気で考えていると譚氏は述べている。

 そんな大昔の歴史物語を根拠に覇権主義を押し通すなんて時代錯誤もいいところで,にわかには信じ難いのだが,国家間の争いや民族間の揉め事なんて,案外そういうところから来ているのかもしれない。パレスチナ問題なんて,いまから3600年以上も前に,モーセに率いられたヘブライ人が「約束の地」であるヨルダン川西岸にやってきたころまで遡って,いまだに流血の応酬を繰り返しているのだから。いま中露の覇権主義を糾弾している欧米諸国や日本だって,ほんの少し前まで侵略と支配を繰り広げていた。覇権主義はこの先もやむことはないのだろうか。

 昨年,国際宇宙ステーションから帰還した前沢友作氏が,「世界中の偉い人たちが宇宙に行って,宇宙から地球を見ながら国際会議みたいなことをしたら平和になると思った」とツイートした。私は,かつて手塚治虫が亡くなる一年前の講演で語った事を思い出した。

『21世紀,宇宙ステーションで人間が生活するようになれば,男女のあいだにカップルができ,子どもが生まれるでしょう。このこどもは生まれながらにして地球を見下ろしながら育つんですね。この小さな地球,彼らから見たら一つの青い球体の上に百億近い人間がいて,自然を侵食している,戦争が起こっている,食べ物が少ない,青い海はどんどん汚染されている。

 そういう状態を見たとき「こんなちっぽけな地球でそんなことをしてしょうがない。何とかしなきゃならん」という気持ちに子どもながらに思う。それはひとつの哲学なんです。それは人間が地球から飛び出して宇宙へ行って初めて生まれる哲学なんです。人間をどこの国とか民族・人種とか,そういうものを離れた,人類全体を見ることによって生まれる21世紀の哲学,そういったものに期待したいと思います』─。 

コラム一覧へ戻る

ページトップへ