セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.887『迫り来る恐怖』

社会・国際

2022-03-07

 ウクライナ侵攻で石油価格の高騰が続いており,日本政府も元売に支払う補助金上限額を25円まで引き上げたうえ,750万バレルを民間備蓄から放出するなど,対応に大わらわだが,ほかにも様々なモノの価格に影響が出ている。例えば─。

『ウクライナ情勢を受け,米シカゴ商品取引所では4日,小麦の先物価格が14年ぶりの高値となった。ロシアの侵攻前に1ブッシェル(約27㌔)あたり8㌦台だった価格が13㌦を超えた』─3月4日付「朝日新聞」。

 日本の小麦の輸入先は米加豪3国で9割を占めるが,世界規模ではロシアが全輸出量の17㌫,ウクライナも12㌫を賄っており,国際価格の高騰に否応なく巻き込まれる。パンもパスタもラーメンも軒並み値上がりは必至だ。先進国の中で食料自給率がダントツに低い(約37㌫,小麦は約13㌫) 日本は,最悪食糧難に陥る危険性すらある。ウクライナはまた,世界のトウモロコシの約8㌫を生産しており,そのほとんどが飼料用だという。今回の戦争によって,食肉価格の高騰も確実と見られており,近い将来ハンバーガーは高級品になるかも。

 一方,小麦や大麦には「グルテン」というタンパク質の一種が含まれているが,この摂取量を減らすと,便秘や下痢,生理不順,肌荒れなどが改善されたり,肥満抑制にも効果があるとされている。“災い転じて…”じゃないけれど,この際,おいしい日本のお米をたくさん食べて,食生活を改善してみても良いかも。いま,西側諸国と大企業が一斉にロシアへの経済制裁を行なっているが,それは石油や食料品,工業製品などの不足や値上がりという“痛み”をもたらすわけで,どこまでそれに耐えられるか…。

 いや,いまや事態はそんな段階ではなく,核戦争の危機に直面している。例えば,米・プリンストン大学の研究チームが,米・NATOとロシア間の核戦争の推移をシミュレーションしたところ,両陣営が核弾頭を使い切るまで戦えば,4時間30分後に9500万人が死亡または負傷するとの試算結果が出た。だが,これで終わりではない。

 ある気候学者の予測によれば,爆発によって生まれた1億5000万㌧ものすすが成層圏にまで達し,最終的に地球全体に広まるとのこと。その結果,すすの中に含まれるカーボンブラックによって世界中の空が真っ黒になり,日光が遮られ,「核の冬」と呼ばれる氷河期が到来するという。この状態の地球ではそれぞれの季節が短縮され,一方でオゾン層が薄くなるために遠紫外線照射が強くなり,多くの食物が枯れると見られており,世界的な凶作が発生し,中国では米の生産量が現在の20㌫にまで減少し,中国国内では3億人の人々が,世界規模では約20億人もの人々が餓死する可能性があると見られている。あくまで推測だが。

 そこまでの大惨事にはならないとしても,何人もの軍事専門家が,ロシア軍が局地戦において戦術核兵器を使用する可能性は小さくないと指摘している。もし,そうなれば1945年の広島・長崎以来の核兵器使用ということになる。だが,そうなったとしても米国もNATOもロシア軍と戦うことはないだろう。理由は前述のとおり,全面核戦争を引き起こしたくないからだ。ウクライナ国民4400万人をロシアに差し出してもなお,人類滅亡を回避する方が肝要であることは,だれの目にも明らかだ。これが国際政治の現実なのだろう。

 ウクライナではロシアを揶揄したこんなジョークがある。『騒乱で経済がまひしたウクライナから,ついに犬までエサを求めてロシア側に脱出した。でもすぐに戻ってきた。ロシアでは自由にほえることができなかったからだ』─。プーチンに支配されるぐらいなら死んだ方がまし,とばかりに頑強に抵抗するウクライナ。だが,その命運は尽きようとしている。

 西側諸国から見捨てられ,占領されつつあるウクライナの人々の恐怖や悲しみを慮れば,ガソリンが170円になったぐらいでピーピー言ってちゃいけないのだ。一年前と比べて20㍑給油しても,せいぜい400~500円出費が増えただけじゃないか。マクドナルドハンバーガーが20円値上がりするって? それがどうした!食えるだけ幸せじゃないか。ウクライナでいま起きていることは,当たり前の日常が明日も訪れるとは限らないということを私たちに教えてくれているのだ。

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