セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.888『カントリーリスク』

政治・経済

2022-03-14

 『英石油大手シェルは5日,ロシア産原油の購入を続けたことについて「釈明」する声明を出した。前日に欧州報道で発覚し,ウクライナの外相がツイッターでシェルを名指しし,「ロシアの原油にウクライナの血の匂いを感じないのか」などと批判していた』─3月6日付「朝日新聞」。

 欧米が経済制裁を強める中で,石油精製会社に敬遠されているロシア産原油を,シェルが安く買い付けていたことへの抗議を受け,シェルのバンブールデンCEOは,「ガソリンなどの安定供給を第一に考えたが,(購入は)正しい判断ではなかった。反省している」と謝罪することとなった。ロシア産原油でのもうけは,ウクライナ支援などの基金に回すとのことだが,そもそもロシア側に支払われた代金が戦費となることが問題なのだから,償いといえるのかどうか…。

 このように,企業が外国の事業に投融資したり貿易取引をする際に,相手国・地域の政治や社会,経済状況の変化によって損失を被ったりする危険性のことを「カントリーリスク」というそうだ。いま,ロシアを相手に商売をすることは,ウクライナ外相の言葉を借りれば,「血の匂い」のするお金を手にしていることとみなされ,企業イメージを大きく損なうというリスクを負うことになる。

 日本では,11日にファーストリテイリング社がロシアで展開する「ユニクロ」50店の営業停止を決めた。「衣服は生活必需品」(柳井 正会長)との考えのもと,当初はロシア事業を継続する方針だったが,駐日ウクライナ大使は「残念だ」と名指しで批判,海外で不買運動の動きも出るに及んで,一転,撤退を余儀なくされた。ファストリ社の昨年度の欧州における売上高の約4割はロシアにおけるもので,欧州最大の店舗もモスクワにあり,当初の事業継続にはこうした背景があったと思われる。その一方で1000万㌦を難民救済のために寄付したり,防寒着など約20万着をポーランドに避難してきた人たちに提供するなどと発表したのだが,ロシア軍の蛮行がエスカレートする中では理解を得られなかった。今回の方針転換についてネットでは“この後手後手感,なかなかやばいね”などの厳しい声が上がっており,「カントリーリスク」を見誤ったと言わざるを得ない。

 「カントリーリスク」を恐れた世界の主要企業が次々とロシアから撤退しており,ロシア国民の生活はどんどん不便なものになって行くと思われる。“欲しがりません勝つまでは”なんていまの若者たちには通用しないはずだから,マックが食えない,コークが飲めない,アマゾンで買えない,ネットフリックスが観れない,ポケモンで遊べない…となればやがて国民の不満が爆発し,プーチンも矛を収めざるを得ないのではないか─。そんな淡い期待を,西側諸国の人々は抱いているかもしれないが,現実はそんなに甘くはない。

 連日,ニュース映像でウクライナの惨状を目にすれば,否が応にも“ロシア憎し”の感情がこみ上げてくる。だが,それは新たな報復を引き起こさせようとする悪魔の誘惑であり,その誘惑に屈した時,世界中が憎悪の炎に包まれることになる。こんな怖ろしいニュースも─。

『「フェイスブック」,「インスタグラム」を運営する米メタ・プラットフォームズの広報担当者は声明で「ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ,『ロシアの侵略者に死を』といった暴力的な言論のように,通常は当社の規約に違反する政治的表現を一時的に容認することにした。ロシアの民間人に対する暴力を求める呼び掛けは容認しない」と表明した』─3月12日付「ロイター」。

 私はFBもインスタもやらないが,その影響力は核兵器並みであることは理解している。いくら「ロシアの民間人に対しては容認しない」とは言っても,“死ね”だの“殺せ”といった表現を限定的であれ容認するようになったら,世界はますます暴力的になって行くことだろう。かつてヒトラーは『我が闘争』の中でこんなことを述べている。『大衆の圧倒的多数は感情的な感覚で考えや行動を決めるという。この感情は非常に単純で閉鎖的なものなのだ。そこには,肯定か否定か,愛か憎しみか,正義か悪か,真実か嘘かだけが存在するのであり,半分は正しく,半分は違うなどということは決してあり得ないのである』─。

 

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