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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.889『不買運動』

社会・国際

2022-03-21

 毎日,テレビで戦禍に苦しむウクライナの人々,とりわけ子どもたちの姿を観ていると“あの人たちのために何かできることはないだろうか”という思いに駆られる人は少なくないだろう。寄付をする人,チャリティー活動する人,反戦デモに参加する人,中には“義勇兵”として参戦する人までいる。このあいだテレビで聞いたのはこんな話─。

 18年前に来日した愛知県在住のウクライナ人女性は,戦禍を逃れポーランドに避難した母親と妹,その二人の子どもを日本に連れて来るためにポーランドへ飛んだ。5人分の飛行機代を何とか手配したのも束の間,出国直前に妹がコロナに感染していることが判明,やむなく4人で日本に戻ることに。疲労困ぱいで自宅に戻り,タクシーを降りようとした時,ウクライナ人である事を知った運転手は「お金はいりません。おいしいご飯でも食べてください」と言って,去って行った─。

 一方,ロシアに対する経済制裁を支持することで,ウクライナを支援しようとする人もいる。ロシア製品の不買運動は,いまや世界規模のものとなりつつある。アメリカやカナダでは,ウォッカの不買運動が起きているとのことだが,ロシア経済に与える打撃はほとんどないとのこと。まあ,お手ごろな非暴力抵抗運度で自己満足を得るといったところか。そういえば,「007」ジェームズ・ボンドが頻繁に注文していたのはウォッカ・マティーニ。原作者イアン・フレミングによれば,東西冷戦真っ只中に登場したボンドが“ロシアを飲み干す”という意味をこめてこれを愛飲していたんだとか。

 だが,ロシアからモノを買わないといっても,そんなに容易なことではない。石油や鉱物資源,木材,穀物,水産物等々,ロシアの産物をまったく買わずに世界経済を維持するのは不可能と見られている。例えばこんな具合に─。

『ウクライナへ侵攻を続けるロシアに対する追加経済制裁をめぐり,政府がロシア産のカニやサケなど水産物の禁輸を見送る方向で調整に入ったことが18日,分かった。禁輸に踏み切れば,ロシア産を扱う水産加工業者が廃業に追い込まれ,地域経済に打撃を与えかねないと判断したもようだ。農林水産省によると,タラコやウニは国内消費に占めるロシア産の割合が高く,輸入を禁じれば,加工業者に加え,外食産業にも影響が及ぶ。政府関係者は「与党議員の抵抗が激しく,(禁輸実施は)難しい」と話している』─3月19日付「時事通信」。

 まあ“背に腹は代えられない”ということか。首相が「暴挙だ」「断じて許し難い」などと言っても,実際のところいろいろ“大人の事情”があって,一筋縄とは行かないのだ。ただ,この先,ロシアが無差別爆撃や生物化学兵器の使用など,さらなる蛮行に及べば,人々の憤りが爆騰するのは必至。「ロシア産」表示のサケの切り身や明太子が店頭で売れるかどうか。それを隠蔽するために,産地偽装やら,このあいだの「熊本産」アサリのような姑息な手口が横行する恐れもある。

 米国ホワイトハウスのサキ報道官は15日の記者会見で,「われわれの前例のない制裁は,ロシアの30年の経済成長を台無しにした」と語り,「ルーブルの価値は1ペニー(約1円)以下となり,何兆ドルものビジネスが中断,ロシアの金融セクターは深刻な環境下に置かれている」と成果を誇示したが,これまで米国と同盟国が経済制裁を課した国々はどうかというと,何だかんだ言っても政権を維持している。ましてや,ロシアの食料自給率は150㌫を越えており(2019年調べ),生活の質が落ちることはあっても,餓えることはまずない。不買運動で戦争を止めることは難しい。

 一方,日本の食料自給率は長らく30㌫台で推移しており,食糧安全保障の観点からすれば,非常に危険な状況に置かれている。実際のところ日本は“買ってやらない”なんて偉そうなことを言える立場ではなく,いつ“売ってもらえない”立場になって土下座させられてもおかしくない。詩人・高村光太郎は『食うものだけは自給したい。個人でも,国家でも,これなくして真の独立はない』と著したそうだが,いま日本がどこかの国に海上封鎖などされてしまったら,たちまち飢餓に陥り滅びてしまうだろう。ガソリンスタンドなんかやっているよりも,有事を見据えて家庭菜園など耕し,自給自足生活の備えをしておいた方が賢明かもしれない。

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