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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.897『滅び行く国で』

社会・国際

2022-05-16

『米テスラCEOのイーロン・マスク氏は7日,2021年10月1日時点の日本の総人口が前年から64万4000人減の1億2550万2000人となり,過去最大の落ち込み幅となったというニュースに反応し,ツイッターへの投稿で「当たり前のことをいうようかもしれないが,出生率が死亡率を上回るような変化がない限り,日本はいずれ存在しなくなるだろう」と述べた。かねて世界の出生率の低下傾向に警鐘を鳴らしてきた同氏だが,日本に言及するのは珍しい』─5月8日付「日本経済新聞」。

 人口減少が加速している要因は少子化だと思われているが,実際には第二次ベビーブーム期である1973年以降,夫婦の平均出生子ども数はそれほど大差なく2人前後で推移している。つまり,第二次ベビーブーム期のお母さんと2015年のお母さんとで産む子どもの数はそれほど変化していないとのことだ。もちろんこれは比率なので,出産実数では減少している。それは生まれてくる子どもの数が減ったというより,お母さんの数が減ったからなのだ。

 国勢調査ベースで見ると,1985年時点では,15~39歳の女性で1人以上の子どもを産んだお母さんは,約1060万人存在していたが,30年後の2015年には,同年齢で497万人と半分以下までまで減少した。つまり,少子化ではなく“少母化”が人口減少の要因となっていたのだ。日本政府は,2007年から内閣に少子化担当大臣を置き諸策を講じてきたが,専ら子育て支援に重きを置いてきたきらいがあった。だが,結果的にはそもそも婚姻数を増やす必要があったわけで,これまでの政策は的外れだったことになる。

 婚姻数の減少を招いた要因は複合的だが,やはり経済的なものだと思われる。日本の25~29歳の男性の平均年収は手取りで約300万円。同世代で600万円以上の人はわずか0.3㌫というのが現実。しかも,長引くコロナ禍やウクライナ戦争などで,将来はますます不透明・不安定になっている。「愛さえあればなんでも乗り越えられる」なんて,あまりに無責任に聞こえる。ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルによれば「結婚とは,ひとつの消費行動」なのだそうで,それで言えば,いまの多くの日本人男性にとって“結婚はコスパが悪い”ということになる。

 少子化問題は日本だけでなく,世界各国が喫緊の課題として取り組んでいる。例えば,東欧ハンガリーでは,2010年以降,結婚する人に最大400万円を無利子で貸付け,その後3人子どもをもうければ返済が免除されるとか,4人出産した女性は生涯 所得税が徴収されないなどの少子化対策を,GDP比4.7㌫の国費を投じて推進した結果,10年間で出生率は1.23から1.49と改善され,10万人以上子どもが増えたという。現在,日本で少子化対策のために費やされる予算は約4.8兆円でGDP比1.3㌫。もし,ハンガリーと同じ規模に拡充すると約23兆円。まあ,無理でしょうね。

 日本の人口減少を加速させる要因はほかにもある。推計によると,2024年から日本では毎年150万人以上が死ぬ時代が始まるという。これは,1918年のスペイン風邪による死者数149万人を超え,太平洋戦争期間中の年間平均死亡者数に匹敵する数で,これが50年間継続するというのだ。世界一の長寿国が,まもなくダムが決壊するように“多死化”の時代を迎えるのだ。このまま行けば,2022年から2100年まで合計1億1576万人が死亡し,生まれてくるのはわずか4728万人程度で,差し引き約6850万人の人口が消滅,いまの半分程度になるとのこと。

 人口6千万人といえば,いまのイタリアと同じぐらい。先進国ダントツの人口密度は緩和され,一人当たりの面積はドイツやイギリスよりも“広く”なる。そう聞くと人口減少があながち悪いことのようにも思えないが,当面の問題は膨らみ続ける社会保障費をどうやって賄ってゆくかだ。現役世代からさらに徴収するとなれば,ますます婚姻数は減り続け,日本全体が巨大な老人ホームのようになってしまい,2100年を待つことなく,マスク氏の言うとおり「日本は存在しなくなる」かも。

 人口減少は避けられない未来であって,それを食い止めることは,若返りの薬でも発明されない限り土台無理な話と捉え,現実的な対応をしていったほうが得策なのかもしれない。GS業界も相変わらず価格競争をしているが,やがてどれだけ安くしてもお客さんが来ないような国になることを見越して,いまからフォーマットチェンジ,あるいはフェードアウトを念頭に置いた経営へとシフトすべきだと思うのだが…。 

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