セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.899『電力>EV>ガソスタ ?』

政治・経済

2022-05-30

 先週水曜日(26日)の深夜零時近くに,自宅を含む約1,700戸で停電が発生した。私は就寝中だったが,妻がまだ起きていて“停電だ,停電だ”と騒ぐものだから目が覚めてしまった。5分もすれば復旧するだろうと思っていたが,思いのほか長く続き,復旧に1時間余りかかった。妻は冷蔵庫の中身を心配していたが損害はなく,テレビ番組が途中までしか録画できなかったぐらいで済んだものの,時間帯が早かったり,停電が長引いていたらいろいろ大変だったろう。中部電力によれば,原因は「弊社設備のトラブル」とのこと。

 一方,経産省は27日,今夏と今冬の電力需給の最新見通しを公表した。それによると,ピーク時の電力需要に対する余力を示す「供給予備率」は,中部・東京・東北電力管内で3.1㌫。電力の安定供給には最低でも予備率3㌫が必要とされており,ギリギリの状態。冬はさらに厳しく,1月は東京はマイナス0.6㌫,他は1.3㌫に陥るとのこと。ただし,いずれも「10年に一度の暑さや寒さを記録した場合」との条件付だが,近年は10年どころか,「観測開始以来」の暑さ,寒さが到来することが珍しくない。

 また,今月予定していた関電高浜原発3号機(福井県)の再稼働が見通せなくなったこと,老朽火力発電所の休廃止増加も供給逼迫に拍車をかけている。さらに,ウクライナ情勢の深刻化で資源調達の不確実性も高まっている。経産省としては早めに需給逼迫をアナウンスすることで,節電意識を高めたいようだ。具体的には『ご家族でですね,この夏場,部屋別れてエアコンを使うのではなくて,テレビなど,一つの部屋に集まって見ていただくような,ちょっとずつの試みをしていただくことで,乗り越えて頂けると思います…』(萩生田経産相の談話)

 政府は大企業などを対象に「電気使用制限」を発令し,違反すれば罰金を科すことも検討しているという。とにかく,大規模・長時間の停電を引き起こさないよう政府も必死だろう。対応を誤れば,目下上昇中の内閣支持率も急落,7月の参院選にも悪影響を及ぼしかねない。GS業界にも営業時間の短縮などの要請が来るかもしれない。

 こんな状況の中で,前回取り上げた軽EVのCMが早速じゃんじゃん流れているけれど,大丈夫なのかねえ。前にも書いたけれど, 国内の乗用車をすべてEV化したら,原子力発電10基分に相当する電力を増強しなきゃならないとの試算が出ている。無理でしょ。東日本大震災の惨禍を経験した日本では,原発の増設はおろか再稼動さえままならない。どうやってEV社会を支えてゆくつもりなのか,グランドデザインも描けないままEVが増えたら“EV栄えて民滅ぶ”なんてことになりはしないか。

 それにしても,EVのCMで“スタンドに行かなくて済むんでスッゴくラクです!”なんて宣伝されるのを観るたびに“そんなにGSに行くのって煩わしいことなのかなあ”と考えさせられる。GSが無い過疎地域は別として,普通は車で5~10分も走ればGSの一軒や二軒あるだろうし,昨今はほとんどセルフ。給油に何分も待たなきゃならないことなど滅多にないし,ノズルを握れば2~3分で満タンになる。用事のついでに立ち寄るのであれば,さほど面倒なことじゃないはずだ。私が思うに,やっぱりまだ “エンジン点検しましょうか”“洗車いかがですか”果ては“水抜き剤入れといたほうがいいですよ”などと声かけしてくるGSがあるからじゃないだろうか。

 楽天市場では『GS無料点検おことわり』というステッカーが売られている。戸口に貼ってある『訪問販売おことわり』と同じ類で,声かけに対するドライバーの忌避感をひしひしと感じる。これからも,EVメーカーはGSへ行かずに済むことを殊更に面白おかしく喧伝するかもしれない。電力供給に不安を抱えながらもEVへ乗り換える人が増加する主な理由が,「ガソスタへ行く苦痛から解放されるから」ということになれば,業界人としては残念なことである。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ