セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.901『お役所仕事』

オピニオン

2022-06-13

 先月 ワイドショーで散々報じられた例の山口県阿武町の給付金誤送金騒動。4630万円もの大金が振り込まれた住民男性は,愚かにもネットカジノにその金をつぎ込み,電子計算機使用詐欺容疑で今月8日に逮捕されてしまった。驚くべきことに,そのお金はそっくり返ってきた。容疑者は,カジノを利用するにあたり3つの決済代行業者に合計約4300万円を出金したが,騒ぎが大きくなり,賭博幇助罪などの容疑であれこれ調べられたらまずいと判断した決済代行業者が,身銭を切って全額を返金したのではと報じられている。

 ネットカジノはマネーロンダリングの温床とも言われている。今回の事件は“思いがけず大金を手にしたため良心が狂ってしまった哀れな男の物語”にとどまらず,ネットカジノの深い闇の一端に触れる出来事だったのではなかろうか。もしかしたら,政財界を揺るがす金融スキャンダルに発展したかもしれない。だとしたら,この1ヶ月,関係者は生きた心地がしなかっただろう。

 それはともかく,誤送金の9割余りを回収したとして“勝利宣言”のような発表をした阿武町役場だけれど,元はといえば463世帯分の給付金を一人の口座に振り込むというヒューマンエラーをやらかした当事者なわけで,猛省してもらわなければなるまい。なんでも,今年4月に入ったばかりの新米職員が,463世帯にそれぞれ10万円送金した上で,振込先の住民リストが入ったFD(フロッピーディスク)と,町長の決済印が押された振込依頼書を銀行に提出のだが,その依頼書に誤記載があったことが原因だったとのこと。本来ならFDの振込みで完了するのに,わざわざ振込依頼書も提出したことが仇となったというわけだ。ハンコをついた町長,依頼書をチェックしなかった銀行も間抜けとしか言いようがない。

 それにしても,いまだにFDなるものが使われていることに驚いた。ネット送金の方が確認や修正も簡単かつ確実なのに。せめてUSBを使えば安全だと思うのだが。「地方」ってまだまだそんな感じなのかな。そういえば,このあいだ参議院の予算委員会で,コロナ対策の名目であれば自治体が自由に使える,いわゆる「コロナ交付金」について取り上げられていたが,多くはマスク・消毒液の購入や,経済的打撃の大きい業種への支援に使われているものの,花火大会開催や首長の公用車購入など,首を傾げたくなるような使途もあると指摘されていた。石川県能登町は,交付金2500万円(!)を投じて巨大なイカのモニュメントを製作し,駅前に設置した。コロナ禍で観光客が激減する中,特産物のスルメイカをアピールするのが狙いなんだとか…。

 そんなことにカネ使う前に,肝心の行政システムをきちんと整備しておく方が大切なんじゃないか? ところが,役所という所は,合理化や機械化をひどく嫌う。自分たちの仕事が無くなってしまうことを恐れ,いままでの業務を変えようとしない。今回の阿武町の事案は,まさにそうした「お役所仕事」の構造的欠陥を象徴するものであるといえる。

 セルフGSに対する規制も1998年の施行以来,まったく変わっていない。やはり監督官庁は,自分たちの“仕事”が減ってしまうことを恐れているのだろう。2018年に経産省主導で開催された「次世代燃料供給インフラ研究会」は,移動式給油の活用や無人化も視野に入れた簡素化による低コストでの機能維持の確保を提言し,報告書をこう結んでいる。『燃料供給インフラは喫緊の課題に直面している。需要が減少する中で,適切な対応が行われなければ,ある時点で大幅にインフラ機能が損なわれるおそれがある。ひとたびこうした事態が起これば,インフラ機能を回復させることは容易ではなく,上述の事項はスピード感を持って実施される必要がある』─。

 一応 識者が集まって討議し,立派な報告書をまとめました。でも,実行するかどうかは別の話ですよ─というわけで,「スピード感」は何処へやら,4年経っても放ったらかしで,これぞ「お役所仕事」。これからも時代や環境の変化に無関心なまま,旧態依然としたシステムが守られて行くのだろう。それは税金を非効率な仕方で使っていることにほかならないのだが,私も含め,ほとんどの日本国民はもう諦めてしまっていたが,今回,阿武町での事件で,惰眠から少しだけ目を覚まさせられた気がする。

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