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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.903『ゼレンスキー疲れ』

社会・国際

2022-06-27

 最近,「ゼレンスキー疲れ」という言葉が聞かれるようになった。2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻も,100日を超えたあたりから厭戦ムードが漂い始め,米CBSテレビの最近の世論調査によると,ウクライナ問題に「米国は関わるべきでない」と答えた人は53㌫で「ウクライナを支援すべきだ」の43㌫を上回った。別の調査では,現在米国が直面する課題を「インフレ」とする回答が27㌫と最多で,「外交」はわずか4㌫と関心の低さが際立つようになってきた。

 欧米諸国がウクライナ支援を“重荷”と感じるようになってきたのと呼応するように,主戦場であるウクライナ東部でのロシア軍の攻勢が勢いを増しており,ウクライナ軍は要衝セベロドネツクから撤退することになった。もっとも,これについて米国防省の高官は,「ウクライナ軍がただ単に守りやすい場所へ移動したに過ぎず,ロシア軍がわずかな領土を獲得するために払った犠牲は余りにも大きい」と述べている。いずれにせよ,一進一退の消耗戦が続くことは必至と見られている。

 ウクライナへの関心が薄まってゆくことへの焦りなのか,ゼレンスキー大統領は連日,最新兵器の供与を訴え続けているが,エネルギー・食料品の高騰で政権基盤が揺らいでいる西側諸国の首脳は,うんざりしているというか,イライラしているというか…。それが「ゼレンスキー疲れ」と表される所以なのだが,これもロシアの情報操作の一環だと指摘する専門家もいる。“食料の武器化”と呼ばれる,ロシアによるウクライナ産小麦の輸出ブロックや友好的な国だけに輸出するといった措置などで,最大4千7百万人が飢餓状態に陥ると予想されている。そんなことになる前に,何とか“手打ち”をしてもらえないかなぁと思っている国際社会の空気を知ってか知らずか,ゼレンスキー大統領は「クリミアも含めて全て取り返さない限り戦争は終わらない」と言い続けている。そこまで米国やNATOが支援できるかどうか…。今後の状況如何では,ゼレンスキー氏が“駄々っ子扱い”されるような事態もあり得る。

 例えて言うなら,レイプされた被害者が,相手との示談に応じず,法廷でとことん争うと決意するも,被害者の家族や友人,警察官や裁判官までもが“そこまでしなくてもいいんじゃないか。あなたの側にも非があったんじゃないか”と示談に応じるよう圧力を掛けるにの似ている。被害者はまるで共謀者であるかのような扱いに深く傷つく。これを“セカンドレイプ”と呼ぶ人もいる。ウクライナが国際社会からそうした扱いを受けるとすれば,今後,同様の“国家的レイプ”が常套化するかもしれない。今回の戦争の帰趨は,その後の文明社会の行方を決定付けることになるだろう。

 私たちは「ゼレンスキー疲れ」は経験しないとしても,「ウクライナ疲れ」のようなものはすでに経験しているのではないだろうか。戦争が始まった時の興奮状態は鎮まり,退屈さが忍び寄ってきている。ウクライナ戦争により物価が高騰し,米国はこれを抑えるために長期金利を上げた。ドル買いが進み,相対的に円安となり,ガソリン価格をはじめあらゆるものが値上がりしている。ウクライナの無辜の人々の命よりも,自分の家計のことの方が心配になってくる。

 JPモルガンのJ・ダイモンCEOは,原油価格が早晩1バレル175㌦ (約2万3000円)まで上昇しかねないと警告しており,中間選挙が迫るバイデン大統領は,先日「エクソンは神より多く稼いでいる」と述べて,原油高に付け込み,巨額の利益を上げる石油会社を糾弾して増産を促すと共に,石油税を暫定的に停止させるよう議会に要請した。日本でも,1月から1兆円もの「ガソリン補助金」が石油元売に投入されてきたが,その結果元売三社は揃って最高益をあげている…。

 人々の関心事は,核戦争の不安よりも,きょう一日の糧を得ることに傾いてゆく。ウクライナに対する共感疲労は“倦怠感”へと遷移し,日増しに強まる生活苦に“ウクライナにかかわるよりも,物価高を何とかしてくれ”という気分が蔓延しつつある。ガソリンの価格が下がるなら,ウクライナが白旗を揚げることになってもやむを得ない─。そんな呟きをゼレンスキー氏が聞けば,「それこそがプーチン一味の狙いなのだ,ウクライナから目をそらさないで!」と言うかもしれないが,ガソリン価格が上がれば上がるほど,ウクライナへのアテンションは下がってゆくというのが悲しい現実だ。

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