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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.905『暗殺』

社会・国際

2022-07-11

 このコラムは,毎週月曜日に自社のホームページ(https://lc-system.net/)にアップするようにしているので,土曜日に書き始め,遅くとも日曜日には書き終えるのだが,金曜日が来ると“ああ,また明日コラム書かなきゃならないなぁ,どんなこと書こうかなぁ”と少々憂うつになる。ネットニュースを見ながらネタ探しをするのが習慣となっているのだが,先週の金曜日(8日)は午後から“安倍元首相 銃撃・死去”のニュースで大騒ぎになった。

 現職の首相ではないものの,歴代最長の在任期間を経て,現政権にも強い影響力を行使してきた実力者の突然の死,しかも,銃火器により殺傷されるというショッキングな事件。直後から襲撃される瞬間の映像が次々にネットにあがり,日本列島を震撼させた。米国では,毎週のように銃による無差別殺人が発生しているが,日本で銃撃事件といえば暴力団の抗争ぐらいしかなかったので,いよいよ日本もヤバい国になってきたのかなぁと感じる。

 犯人の元自衛官の男(41歳)は,手製の銃で犯行に及んだとのことだが,ネットでは銃や手榴弾の作り方などが公開されているそうだから,今後,模倣犯が現れる危険性は高い。また,ネットには早くも“犯人は○□国人”といった外国人への憎悪を煽るコメントが流布されていると聞く。不穏な空気に乗じて社会の分断を図ろうとする勢力が活発化し“戦争前夜”のムードに似たものが醸成されることを危惧する声もある。

 とはいえ,安倍氏の死去がすぐさま私たちの生活に変化をもたらすわけではない。事実,当日も前代未聞の事件に驚きつつも,普段どおり仕事をし,食事をし,風呂に入り,寝床に就いた。どんな著名人や実力者が死んでも,地球の回転は1秒たりとも遅れることなく,次の日がやってくる。だが,安倍元首相の死は,この先,日本政治の権力バランスを大きく変化させるだろうし,この国の憲法改正や安全保障の問題に少なからず影響を及ぼすだろう。ひいてはそれが,世界の政治・経済にも影響するかもしれない。いわゆる「バタフライ効果」というやつだ。1914年にオーストリア皇太子を殺害した銃弾が,最初の世界大戦を生じさせたように,もしかしたら,今回の事件がより大きな出来事の引き金になるかもしれない。だが,いまはそんなことを心配してもはじまらないわけで,落ち着いて市民生活を送ることが肝要だと思う。

 それにしても,今回の事件は日本警察の威信を失墜させる大失態だったと報じられている。確かに,映像を見る限り,犯人が安倍氏の背後から悠々と近づいている様子が分かる。そして一回目の銃撃のあと,すぐさま安倍氏を押し倒してでも守るべき警護官(SP)は,その瞬間「えっ?!」という感じで銃声がした方を振り向いているように見える。その間に,二発目が発せられ,あわてて防弾かばんを掲げながら間に入ったものの間に合わず,安倍氏に命中してしまったようだ。専門家によれば,選挙遊説など,要人が群衆と近接するシュチュエーションでの警護が最も難しいそうだが,やはり油断があったことは否めないと思う。また,今後要人はどこへ行くにも防弾チョッキ着用が必須となるのではないか。

 多くの人が,この事件は民主主義の根幹を揺るがす大事だと論じているが,作家・三島由紀夫は,『私は民主主義と暗殺はつきもので,共産主義と粛清はつきものだと思っております。共産主義の粛清のほうが数が多いだけ,始末が悪い。たとえば暗殺が全然なかったら,政治家はどんなに不真面目になるか,殺される心配がなかったら,いくらでも嘘がつける』と述べている。テロを“必要悪”として認めるかのような不穏当な意見だが,要は,政治家という職業は,常に命の危険にさらされるものであり,何時も緊張感を抱いて行動しなければならないということなのだろう。飲酒運転した挙句に事故を起こしたり,自粛期間中に繁華街を飲み歩いたり,未成年と飲酒してホテルに連れ込んだり等々の愚行を犯し,恥をさらすなんてことは三島に言わせれば万死に値するということなのだろう。

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