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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.909『戦争というものは…』

オピニオン

2022-08-08

 毎年8月になるとNHKでは太平洋戦争にまつわるドキュメンタリー番組が過去のものも含め連日放映される。日本という国で生まれ育った者として,やはり太平洋戦争についてはある程度の知識と理解を得ておくべきだと思うので,私はこの時期,それらの番組をせっせと録画し,洗濯物をたたみながら観たりしている。観終わったあとには決まって,戦争を体験することなくきょうまで生きられたことへの感謝の念と,無謀な戦争を始めた指導者たちへの憤りがこみ上げてくる。

 終戦から77年を経て,当時を知る人たちの人数は急速に減少しており,数年後にはいなくなってしまう。実際,日本が米国と戦争したことを知らないという若者は少なくなく,「で,どっちが勝ったの?」なんて問い返されてしまうのだとか。マジかよ。まあ,それだけ平和な国だということなんだろうけれど,多くの若者がその無知蒙昧に付け込まれて“いつか通った道”に誘われやしまいかと心配ではある。

 とはいえ,ウクライナのように相手から一方的に戦争を仕掛けられたら否応なく戦禍に巻き込まれてしまうのも事実。ロシアがウクライナへの警戒感を募らせ,国境周辺に続々と軍隊を展開していた半年前に,プーチンとゼレウスキーが膝を突き合わせて話し合うことで何とか戦争を回避できなかったものかなあとも思うが,いまや世界は驚くほどわかり易く二つに分かれ,角衝き合う状況となってしまった。「平和」という言葉が,これほど虚しい響きを持つ時代が来ようとは…。

 第二次世界大戦以降70年間戦争をしなかった国は,国連加盟193カ国のうち,アイスランド,フィンランド,スウェーデン,ノルウェー,デンマーク,スイス,ブータン,日本のわずか8カ国だそうだ。とりわけ,敗戦国・日本は,朝鮮,台湾,南樺太などを失ったため,領土面積が戦前の54㌫になり,実質支配下にあった満州国の130万平方㌔も含めると戦前の20㌫余りに減った。にもかかわらず,1968年には世界第2位の経済大国にまで復興できたのは,ひとえに戦争をせず,経済に専念できたからだろう。

 しかし,時代は変わった。先に挙げた8カ国のうち5カ国は北欧の国だが,今年に入りそれらの国がかつてない緊張状態に置かれているのはご存知のとおり。ロシア・中国・北朝鮮を“ご近所”に持つ日本も,それほど遠くない将来,武力紛争,つまり戦争に巻き込まれるだろうと懸念されている。“覇権国家に屈するぐらいなら命を賭して戦うべきだ”と主張する人がネット民を中心に増えているようだが,一方で“死んじゃうぐらいなら,「ごめんなさ~い」って謝っちゃえばいいじゃん”という若者も結構いるんじゃないだろうか。何年か前にテレビの街頭インタヴューで,「もし,国のために戦争に行けと言われたらどうします?」とマイクを向けられた若い女性が,「そんなことを言う国に従うつもりはありません」ときっぱり答える姿を見て,はっとしたことを覚えている。77年前は,そういう人は「非国民」とよばれたけれど,もしいま世界中の若者が彼女と同じ考え方をすれば,戦争なんか起こりっこないなと思った。『愛国心とは喜んで人を殺し,つまらぬことのために死ぬことだ』─B・ラッセル。

 戦争を体験していなくても,どれほど悲惨で無意味なものかはわかる。まだ20代のころ,石油組合の会合か何かで,老齢の経営者と議論になり,言葉に窮したその経営者が「お前みたいな戦争に行ったこともない奴にあれこれ言われる筋合いはない!」と怒り出した。「はぁ? 戦争に行ったことがそんなに偉いことなんですか!」と私。ましてや太平洋戦争は日中戦争継続のための資源欲しさに日本が仕掛けた侵略戦争だ。抗うこともできず戦場に駆り出された人たちはただただ気の毒だと思うが,戦争に行ったことがりっぱなことだとは思えない。『いかに必要であろうと,いかに正当化できようとも,戦争が犯罪だということを忘れてはいけない』─A・ヘミングウェイ。

 それにしても,GDPが10倍以上の超大国と戦争して勝ち目などないことぐらい日本の指導者たちもわかっていたはずだ。私が一番切なく思うのは,戦没者310万人のうち約9割は最後の1年間に集中していたことだ。米軍の戦死者の半数 約5万人も1944年以降のものだという。つまり,サイパン島が陥落して「絶対国防圏」が破られ,時を同じくしてビルマでの「インパール作戦」が失敗に終わったあの時に,潔く白旗を揚げていれば,敵味方どれだけ多くの命が救えたか。沖縄が戦場になることも,原爆が落とされることもなかったのだ。『戦争というものは,最も卑しい罪科の多い連中が権カと名誉を奪い合う状態をいうのだ』─L・トルストイ。

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