セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.92『これでいいのか灯油販売』

GS業界・セルフシステム

2006-01-16

 灯油!灯油!灯油!─とにかく、いまあぶら屋さんの間での話題と言えば、こればっかりである。ほかに話題はないのか!と言いたいぐらいである。しかし、それもやむを得まい。とにかく今年の灯油市場は異常である。記録的な寒波の到来で品薄状態、業転価格は天井知らずで上がり続けている。これまでは価格で優位に立っていた独立系量販店も、今年はすっかりおとなしくなってしまった。ホームセンターの中には、出荷規制によって「売り切れ」の貼り紙を出さざるを得なくなり、事実上の“白旗”を挙げたところもある。

 こんな時こそ、従来の系列店はきちんと値取りをして儲ければ良さそうなものだが、今年はいままでの意趣返しとばかりに、業転の仕入れ値以下の売り値で灯油を販売する始末。おかげで「豊作貧乏」の様相を呈している。もったいねぇな~。

 しかし、こうなったら、行くところまで行った方がいいのかもしれない。ただでさえ高値感を抱いている消費者が、業界の無策ゆえに生じた混乱に寛大であるとは決して思えない。おまけに、松下電器の石油ファンヒーターによる死亡事故などもあり、今後灯油離れは進むのではないか。冬が来れば“黙っていても”売れていた商品だが、これからはそうも行かなくなるのではないか。

 思えば、ガソリンスタンド業界は、これまでも消費者不在の手前勝手な販売政策を推し進めたために、貴重な収益源を失ってきたように思う。例えば、元売がセルフ化にかこつけて半強制的に行なわせた合理化によって、油外商品の管理や販売に精通していた熟練スタッフが数多くリストラされ、現場は混乱した。スタンドに残ったのは、ロクに商品知識も持ち合わせていない未熟なアルバイト兵ばかりとなり、客はスタンドでの商品の購入や点検・修理に不安を抱き、やがてカーショップなどに流れて行ってしまった。いまになって、元売はまた人材育成を叫んでいるが、一年や二年で何とかなるものではなく、挽回は難しい状況だ。

 洗車についても、人手減らしに熱心な元売と、新型洗車機を売りたい洗車機メーカーとの利害が一致して、ドライブスルー洗車機がセルフスタンドに導入されたものの、顧客満足をもたらすことができないうえに、全然儲からないことが明らかになり、最近では、手洗いによる高級洗車がブームとなっている。しかし、これもいつまで続くことやら。きのうまで「安かろう悪かろう洗車」を勧めていたかと思えば、今度は一台五千円もするワックス洗車しかやらないと言う─こんな無茶苦茶なことをやっていれば、客の洗車離れも進む。そうこうしているうちに、“次の車検までワックスがけ不要”なんていう塗装を謳い文句にした車が出てきたりしたら、ガソリンスタンドの洗車事業は壊滅する。

 灯油にせよ、他の油外商品にせよ、何の哲学も持たず、ただその時々の業界の事情で売っているようだと、そのうち手ひどいしっぺ返しを受けることになるだろう。客は馬鹿ではない。とりわけ日本人は、ガソリンが高いから、灯油が売り切れたからといって、デモや暴動を起こすようなことはない代わり、次からはもう買わないというかたちで抵抗を示すのである。この次の冬は、相当の覚悟をしておかなければなるまい。

 粉雪が舞い散る中、セルフスタンドの灯油コーナーで、昨年より1リットル30円以上も値上がりした灯油を黙々と給油していただいているお客様、本当に申し訳ございません。どうか、ガソリンスタンド、とりわけセルフスタンドをお見限りになりませんよう伏してお願い申し上げます…。

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