セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.921『伏せろ!』

社会・国際

2022-10-31

 連日,ロシア軍の無差別爆撃にさらされているウクライナ。10月25日には,南東部の主要都市ドニプロへのミサイル攻撃でガソリンスタンドなどが破壊されたとCNNが報じている。ウクライナ当局によると,この攻撃でGSとその周辺の洗車場やタイヤ修理店,コンビニも廃虚となった。これまで確認された死者は2人で,そのうち1人は乗用車に乗っていた妊婦,もう1人はGSの従業員だったという。

 劣勢に立たされているとされるロシア軍は,このところウクライナ国内の発電施設などを集中的に爆撃しており,電力供給を滞らせ,厳冬期に宇国民の戦意を喪失させようと目論んでいるとのこと。宇政府は対抗策の一つとして,国内のGSにディーゼル発電機を設置させたり,キャノピーにソーラーパネルを取り付けるなどして,電力インフラを支えようとしているそうだが,今回の爆撃がそうした事由によるものであれば,今後もGSを標的とした攻撃が続くかもしれない。

 そんな緊張状態の中で,ウクライナのGS業界は一時の混乱状況を脱し,価格は高止まりながらも供給は安定しているようだ。直近のガソリン価格は190~200円ほどで,いまならロサンゼルスやパリで入れるよりは安い。宇政府は小売価格の設定に関する基準を設け,これに違反して不当に“高売り”したり,粗悪品を販売したGSを,これまでに600件以上摘発した。9月にはゼレンスキー大統領が,燃料物品税の還付に関する法律に署名,ガソリン・軽油それぞれ1,000㍑あたり100ユーロが返還されることになった。これらの施策により,販売量も回復しつつあるとのことで,宇国内に約400か所のGSを展開する「WOG」は10月28~30日まで「ドライバー感謝デー」と銘打って,満タン給油の客に1㍑あたり約12円の割引きを実施した。

 とはいえ,戦時下にあることに変わりはなく,連日ミサイル攻撃の脅威に晒されている中での営業はまさに命懸けだ。今回,爆撃されたGSで死亡した従業員は,併設の洗車場の係員だったとのこと。防空警報は聞こえたのだろうか。聞こえたけれど,作業中だったのですぐに避難しなかったのだろうか。いずれにせよ,こんなことが日常化しているウクライナは,まさにこの世の地獄といえる。

 ウクライナでは4年前から「グローバル・エナジー」という会社が無人のセルフスタンドのシステムを開発・運営している。ガソリン・軽油用の計量機1基のみのコンパクトな店舗で,一式370万円ほどでできるとのこと。ミサイルの標的にもなりにくいだろうし,人件費がかからない分,販売価格を抑えることができる。日本でも東日本大震災の経験から,移動式給油所の必要性が高まり,横田瀝青興業という会社が「どこでもスタンド」という,計量機をタンクローリーに直結させて給油する仕組みを開発したが,あくまで災害地や過疎地における緊急対応時に限られたもので,給油や誘導のために要員の配置が義務付けられているとのこと。ウクライナの無人スタンドとは似て非なるものだ。

 危機管理は英語で「クライシス・マネジメント」。「クライシス」は古代ギリシャの医学用語で,患者が回復するか重篤化するかの分岐点を意味する言葉なんだとか。日本語の「危機」も,リスク(危)とチャンス(機)の造語だ。危機の時代だからこそ,既成概念にこだわらず,新しいモノを作り出すチャンスでもあるということ。GSがミサイルの標的になるなんて,日本ではあり得ないと思えるかもしれないが,このところ近隣国からしょっちゅう“飛翔体”が発射されていることだし,多少は有事を想定した対策を講じたほうが良いと思うのだが…。

 10月4日には,5年ぶりのJアラートが発信された。メッセージが流れたら,地面に伏せるか,物陰に隠れるようにとのことだが,ネットでは“そんなことで身を守れるはずがない”など懐疑的な意見が多い。ところが,専門家に言わせると,核兵器も含め,爆発に伴うエネルギーの大部分は爆風なので,Jアラートが鳴ったら,建物の中に居てもとりあえずその場に伏せるのは“正解”なんだそうだ。

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