セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.924『インボイス』

政治・経済

2022-11-21

 『来年10月に導入される消費税のインボイス制度について,政府・与党は少額取引の場合はインボイスがなくても税額控除できるようにする期限付きの特例措置を設ける方針を固めた。対象の取引額は1万円未満とする案が浮上している。制度の導入に伴う小規模事業者の負担を軽減する狙い』─11月18日付「朝日新聞」。

 インボイスは,品目ごとの税率(8㌫か10㌫)を明記した請求書のことで,来年10月から,事業者が消費税を納める際,仕入れにかかった税額を控除するには,インボイスが必要になる。インボイスの記載事項には,取引年月日や取引内容,消費税額に加えて,適格請求書発行事業者の登録番号が必要となる。

 GS業界でも,すでに今年3月に石油連盟並びに石商組合が請求書表示のガイドラインを示しており,それを参考にして請求書を発行すれば良い。それによると,POS端末機から発行するレシートについても,概ね今までどおりの内容で問題ないが,一点,発行事業者の登録番号が印字されるようにしなければならない。その番号がない,つまり登録事業者でない会社の領収書は,消費税の控除対象とはみなされないからだ。

 現在は,課税売上高が1千万円以下の法人・個人事業者は消費税が免除されているが,GS業界にはそんな業者は皆無だろう。したがって,粛々と14桁の登録番号を取得して,それをレシートの空きスペースに印字されるようにシステム改修するだけだ。費用も手間もかかるが仕方ない。しかし,インボイス制導入が深刻な影響をもたらすとして反対する業界もある。

 例えば,16日には声優・漫画・アニメ・演劇業界が合同で記者会見を開いた。エンタメ業界では多くのフリーランスが働いており,ほとんどが免税事業者。業界内で個別にアンケートを行ったところ,「消費税課税業者となれば,廃業する可能性がある」と答えた人が,どの業界でも2~3割いることが判明したという。もし登録しなければ,23年10月以降,発注企業はその事業者に支払った消費税分を控除できなくなるので,取引しなくなる可能性が高い。零細フリーランスにとっては“進むも地獄,退くも地獄”というわけだ。

 年収1000万円を超え,既に消費税を納めている漫画家でも,アシスタントが免税事業者の場合,アシスタントへの消費税が控除できなくなる。とはいえ,アシスタントの多くは漫画化デビューを目指す若い人たちが多く,彼らに課税業者になることを迫れば,いわゆる“漫画家のタマゴ”が激減し,漫画文化衰退につながるというわけで,記者会見では,「裾野が削られれば,山は低くなり,作品の低下はじわじわやってくる。一度失われた文化は戻らない」とか,「政府はアニメや漫画などのコンテンツを『クールジャパン』などともてはやしておきながら,クリエイターたちを困窮へと追い詰めるような指針には納得がいかない」など,悲痛な訴えがなされた。欧米とは違い,政治に意見することがほとんどない日本のエンタメ業界が,今回ここまで憤っていることに狼狽したのであろうか,冒頭のような緩和措置を講ずる案が浮上してきた。

 一方,消費税は事業者が消費者から預かった「預り金」なのだから,事業規模の大小に関わらず納税すべきじゃないのか,という意見もある。しかし,これについては,「消費税は,あくまで商品やサービスに対する対価の一部であり,預かり金ではない」という判決が1990年に東京地裁で確定しており,免税事業者が消費税を“ネコババ”しているという見方は誤っているんだそうだ。いずれにせよ,税金を納めたら生きてゆけないなんて,やっぱりその業界は構造的な問題を抱えているといわざるを得ない。

 GS業界では,「免税」なんて言葉は無縁。一部に,免税軽油なるものはあるものの,あくまで農家などへの支援策でありGSには恩恵なし。それどころか,仕入れたガソリン価格の4割以上をガソリン税が占めているのに,「タックス・オン・タックス」でがっちり消費税がかけられている。これからもせっせと納税するだけだ。問題はその額に見合うマージンを得られるかということだが…。

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