セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.925『走行距離税』

政治・経済

2022-11-28

『政府税制調査会で電気自動車(EV)の普及を念頭に,走行距離に応じた課税が必要との意見が出ていることに対し,日本自動車工業は17日の記者会見で,物流業者や車移動が多い地方の負担が増えるなどとし「国民的議論がないままの拙速な導入は断固反対する」(永塚副会長)との姿勢を示した』─11月17日付「讀賣新聞」。

 なぜ「走行距離税」なるものの導入が検討されているかといえば─

 『電気自動車がこれから普及していく訳でございますが,電気自動車等はガソリン車と異なりまして,燃料課税によって走行段階での課税が行われていないわけでありまして,その一方でガソリン車よりも重量が重く,道路への損壊に与える影響がむしろ大きい事,そして厳しい財政事情を考えてみれば,いずれかの時点では負担の在り方を見直すことを考えていく必要があるのではないかと思っております』(10月22日 参院予算委員会での鈴木財務大臣の答弁) ということだそうだ。

 つまり,EVは燃料税を払わずに道路を走っているにもかかわらず,ガソリン車に比べて車体重量が2~3割重たい。道路を傷めているのに,燃料税を払っておらんのは不公平である。だから…ということのようだが,今後,技術が進めば,EVに搭載される蓄電池は小型・軽量になってゆくだろうし,そもそもEVは重量税についてはエコカー減税が適応されているので,まずそれを撤廃するのが先ではないかとの指摘もある。それに,道路に一番負荷をかけているのは大型車両だから,車体重量を論拠とするのはちと苦しいような気がする。

 日本における自動車の総保有総数(二輪も含む)は2022年時点で8217万台余と,2001年と比べて600万台近く増えているのだが,その間,ハイブリッドカーを主としたエコカーが普及し,CO2排出量は23㌫減と,先進国では群を抜く成果を上げている。当然,ガソリン税や軽油引取税などの燃油税関連収入は減り,その額,2001年比で約6000億円。こりゃいかんということになり,新たな徴税方法として走行距離税を持ち出してきたというのがホントのところだと思う。

 まあ,EVだけでなく,すべての自動車にこの課税方式を適用する代わりに,ガソリン税と軽油引取税を廃止してくれるというなら,スッキリするだろう。二重課税の問題も解消する。GS業界にとっては歓迎か。でも,恐らく今度は“ガソリンには環境税を課す”なんてことになるんじゃないかな。一度作った財源をお上がみすみす廃止するとは思えない。

 走行距離税が導入されるかどうかはまだわからないが,そもそもどうやって個々の自動車の走行距離を確認するのだろう。「GPSを使って測定する」という説が専らだが,カーナビやドラレコを搭載していない車はたくさんあるから恐らく無理だろう。だとすれば,どの車にもあるメーターで測ることになるのだろうか。しかし,トリップメーターはリセット可能だし,オドメーターも交換すれば0にできてしまう。中古自動車を高く売るためにメーターの走行距離の増減をイジっている悪徳業者もあるくらいだ。デジタル走行距離計でも,特殊なソフトを使えば改ざんできると言われており,“抜け道”だらけの感がある。果たしてどうなりますやら…。

 ところで,今週のガソリン価格は政府の補助金抜きで200円を下回る(193.7円)とのこと。約3か月振りだそうだ。『石油連盟は21日の記者会見で,今年度第2次補正予算案にガソリン補助金が3兆円計上されたことに言及し,「業界としてさらなる延長は求めない」(木藤会長)と述べた。先月28日に決定した総合経済対策ではガソリン補助金について,来年1月以降も補助上限を緩やかに調整して延長し,6月以降,段階的に縮減するとしている』─11月21日付「産經新聞」。

 …まだこの先ウクライナ情勢如何によっては,原油価格が急騰することもあり得るんじゃないの?そんなに早々と“もう結構です”なんて言っちゃっていいんでしょうか。これ以上補助金もらっちゃうと決算が良くなり過ぎちゃうから遠慮しとこうということなの?それとも,ガソリン税から走行距離税へとシフトチェンジするための前奏曲なのだろうか。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ