セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.926『節電の冬』

社会・国際

2022-12-05

 『冬の電力不足の懸念に対応するため,政府による全国規模の節電要請期間が1日から始まった。来年3月まで。冬季としては2015年度以来7年ぶり。数値目標は設けず,重ね着をして空調の設定温度を下げたり,不要な照明を消したりといった無理のない範囲の節電を呼びかけている』─12月1日付「朝日新聞」。

 夏に続いてまたも節電。これは電力不足の構造的な課題が解決できていないから。脱炭素や自由化で大手電力が採算の悪い火力発電を毎年数基 休廃止したため,電力の供給力が大幅に低下したことに加え,再エネが思うように増えず原発の稼働も進まない。そこで政府は,廃止予定の老朽火力の再稼働を呼びかけたり,点検でとめる時期もずらしてもらうなどした結果,電力供給の余裕を示す「予備率」は,最低限必要な3㌫は確保しているそうだが,それでも節電を呼びかける理由は主に三つ。

 まず,老朽火力頼みの急場しのぎなのでトラブルで発電所が止まるリスクがあること。2つ目は,コロナ下のおうち時間で電力使用が増え,最大需要の予測を上回るケースがあること。そして3つ目にウクライナ危機で,火力発電の燃料となるLNGの供給が不安定であること─。まさに綱渡り状態というわけ。

 とはいえ,政府から節電を求められずとも,一般庶民は1円でも出費を抑えたいと思っている。しかも今月から来月にかけて電力大手は料金の再値上げに踏み切るのだから,なおさらだ。おりしも,12月に入ったとたん急に寒くなった。ホームセンターでは電気を使わない防寒グッズの売れ行きが好調らしい。例えば,「カインズ」が販売している,クッションがロール状になり“着る”ことができる「あったかロールクッション」は売り切れ続出だとか。何だか,時代劇に出てくる菰を巻いた乞食のオシャレ版みたいだが…。

 12月と言えば「クリスマス」,クリスマスと言えば「イルミネーション」だが,まさか市民がクッション巻きつけて過ごそうかという時に,クリスマスツリーをピカピカ,キラキラさせるなんてことはしないでしょうね ? (笑) それはともかく,ウクライナでは節電どころではない。ロシアのミサイル攻撃が多くのエネルギー・インフラ施設を破壊し,大規模な停電・断水に苦しめられている。首都キーウの来週の気温は最低で氷点下5~6℃の寒さが予想されており,WHO(世界保健機関)は「このままでは数百万人が生命の危機にさらされる」との見通しを示している。また,寒さに耐えられず自宅を離れる人々が200万~300万人に達するとも予想している。

 ウクライナのベレシチュク副首相はSNSに,「われわれは今,寒さや暗闇で屈服するわけにいかない。わずか100日だ。その後は春が来る」と書き込み,厳しい寒さのもとでも徹底抗戦を続けるよう国民に呼びかけているが,ウクライナ市民の苦難たるや,想像するに余りある。人道的見地から,ロシアへの国土割譲もやむなしとして,早期の和平交渉に臨むべきとの意見もあるが果たして…。

 一方,EUは2日,G7との協議の結果,ロシアへの追加制裁としてロシア産原油の上限価格を1バレル60㌦とすることで合意した。つまり,ロシアから原油を買う時は,60㌦より高く買わないということで,さらなる経済的打撃を与えようという目論見なのだが,裏を返せば,上限価格以内であればロシアから好きなだけ買っていいよ,ということになる。世界需要の1割を担うロシアから一滴も買わないというわけにはいかない。3日現在のWTO価格が80㌦ぐらいだったから,まあ,高過ぎず安過ぎない価格に設定したと思われる。もちろん肝心のロシアがこの価格を呑んで売ってくれればの話だが。あるいは“もっと安くするからたんと買ってよ”と言ってくるかも…。

 先日,NASAが公開した衛星写真では,ウクライナ全土が漆黒の闇に覆われていた。星座のように輝く周辺国とはあまりに対照的。特にモスクワは眩いばかりの光を放っている。いま,ウクライナにはこの闇に凍てつく寒さが追い討ちをかけている。明るく,暖かな暮らしを送っていることに罪悪感を感じてしまう。せめてもの償いに,エネルギーを無駄遣いしないよう心掛けたい。

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