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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.927『陰謀論』

社会・国際

2022-12-12

 『ドイツ連邦検察庁は7日,国家転覆を企てたなどとして,テロ組織のメンバー22人と支援者3人を逮捕した。暴力や軍事的手段で独自の国家樹立を目指し,一部は武装して連邦議会の襲撃を準備していた疑いがある。組織は2021年11月までに設立され,内部に法務や外務など内閣に似せた部門を作っていたほか,軍や警察への勧誘活動を行っていた』─12月8日付「毎日新聞」。

 “国家転覆”? それも世界有数の近代国家ドイツで…。どこまで本気だったのか定かでないが,近年,世界中で急速に台頭する極右主義が民主主義の大きな脅威となっていることを思い知らされる出来事だった。拘束者の中には米国の過激な陰謀論勢力「Qアノン」の信奉者も複数含まれていたという。彼らは,ドイツ政府が「闇の政府」に支配されていると信じ,暴力と軍事力によって現政府を打倒しなければならないと訴えてきた。昨年の1月に米国の連邦議会議事堂を襲撃した群衆の中にも,「Qアノン」の影響を受けた人々が多くいた。

 陰謀論は,戦時中や経済不況のさなか,また自然災害やパンデミックが生じた後など,多くの人が心配や不安や苦痛を感じる時期に広まる傾向があると言われている。そうした不安な時代に人々が陰謀論を受け入れるのは,それが自分の考えに合った都合のいい情報だったり,悪いことが起きる理由を何者かのせいにすることで不満のはけ口になったりするからだ。

 コロナ禍でコミュニティの場が失われる中,世に不当に遇されていると感じた人たちが,自室にこもってパソコンに向き合い,時代思想の断片を反芻して,自己中心的な世界観を膨らませてゆく─。“自分はそんな愚かな人間ではない”と思っていても,ある社会心理学者が述べているように『本来は思慮深く理性的に考えることができる人でも,願望,期待,心配,意欲のせいで見方が偏ってしまうことがある。その結果,自分の考えを肯定する情報を正しいと考えてしまいがちになる』のだ。

 研究によると,政治的関心や知識が高い人ほど,左右や保守リベラルなどの政治的な立場に関わらず,陰謀論を信じやすい傾向なのだという。また,自分の考えこそが「普通」,「正しい」という感覚を持ち合わせている人も危険だという。つまり,陰謀論を信じるのは,決して“特殊な人”ではないということだ。

 20世紀は「石油の時代」と言われるように,国際情勢は,石油をめぐって動いてきた。20世紀の戦争の陰には,石油利権があった。そのため,今日まで,世界のどこかで戦争や紛争が起こると,決まって石油メジャーによる陰謀論と結び付けられてきた。「9.11 同時多発テロ」も,「イラク戦争」も,「ウクライナ戦争」も,み~んな石油メジャーが裏で演出しているのだ,と。また,欧州のEV化の動きについて,ガソリンエンジン車を得意とする日本車を追い落とすための陰謀だという人がいる。地球温暖化は,CO2によるものではなく自然現象であり,先進工業国に足枷をはめようとして中国が広めるフェイクだという人もいる。真偽の程はさておき,まだまだ石油製品を売って稼ぎたいと思っている人たちににとってこれらは“都合の良い陰謀論”と言える。

 インターネットの発達は,人類を神話や伝説の呪縛から解き放ち,より理性的で思慮深くすると思われたが,実際にはその逆の結果となっている。自らの利益や政治的な目的のために,偏った,あるいは,まったく根拠のない情報が氾濫し,大勢の人たちが惑わされ,社会は混迷の度を深めている。陰謀論から身を守るには,とにかく眉に唾をつけ,言説から一定の距離を取り,安易に信じないようにすることだ。ところでこんなニュースも─。

 『防衛省が人工知能技術を使い,SNSで国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが9日,複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が,無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け,防衛政策への支持を広げたり,有事で特定国への敵対心を醸成,国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている』─12月9日付「共同通信」。

 これが本当なら,まさに国家による“陰謀”と言えそうだが,もしかしてこれもフェイクニュース?

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