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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.936『脱マスク』

社会・国際

2023-02-13

 『政府は10日,新型コロナウイルス対策のマスク着用について,3月13日から新たな指針を適用し,屋内外を問わず個人の判断に委ねる方針を決めた。指針では,全員が着席できる新幹線や高速バス内でのマスクを不要とする一方,混雑する通勤電車やバスでは引き続き着用を勧める。重症化リスクの高い人がいる医療機関や高齢者施設を訪れる際も推奨する。症状がある人や陽性者,同居家族には原則として外出を控えてもらい,通院などでやむを得ず外に出る場合はマスク着用を求める』─2月10日付「時事通信」。

 マスクの着脱はいずれも強制されることがないよう,「個人の主体的な判断が尊重されるよう周知していく」とのことだが,すでに「屋内着用,屋外不要」との指針がでているものの,道行く人たちのほとんどがマスクをしているのが現状だ。“和を以て貴しとなす”という言葉に代表される,日本人社会の同調圧力がそうさせているのか。あるいは“マスクをしなければどう思われるだろう”という自意識が働いてしまうのか。朝日新聞が実施した世論調査でも,春以降,屋内でマスクを着けないことが「増える」は24㌫にとどまり,「変わらない」は74㌫を占めた。


 欧米諸国は,とっくに“脱マスク”を果たしているのに対し,日本がこれほどマスクを手放せないのはなぜか。諸説あるが,マスクというアイテムに対する感覚の問題ではないかという指摘がある。欧米では,マスクを着ける人は権威に盲従する“羊”であることを示唆していると見る向きがあるという。マスクは,秘密主義,不信感,貴族的な変装を連想させ,自由への抑圧の象徴なのだと─。

 一方,日本では,『マスクは,目に見えない脅威や不確実性をコントロールできるという感覚を着用者に与える』(堀井光俊著「なぜ,日本人は仮面をつけるのか」)もので,心理的安全性を感じさせるアイテムとされている。実際,20世紀初頭のスペイン風邪流行の際,欧米とは比較にならないほど『日本の一般市民は抵抗なくマスク着用を受け入れた』(同)そうだ。


 このような“マスク信仰”ともいえる日本人の気質に加え,若い人たちを中心に“マスク依存症”が蔓延している。マスクを人前で外すことは下着を脱ぐのと同じ―。そんな意味を込め,マスクを「顔パンツ」と呼ぶ若者たちもいる。日本顔学会の行なった研究では,素顔よりも顔の一部を隠した方が美しいと感じる人が多かったという。人の脳は,見えている部分から隠れている部分を想像する時,バランスのいい形を思い浮かべるのだそうで,マスクをしているとコンプレックスが隠せる一方,外すことでは緊張感が生まれるため,マスクを外すことに抵抗を感じるのではと同学会は分析している。

 そんなに心配しないで,マスクを取ってニッコリ笑ってみれば ? というオジサンの勧奨も,多感なティーンエイジャーには,無理解な“干渉”と捉えられてしまうのだろう。児童精神科医の山口有紗氏によると,マスクを無理に外させるのは「子どもにとって必ずしも心理的に安全だとは言えない」と指摘している。「突然,強制的に外せと言われたら,3年前に突然マスクをしなさいと言われたときと同じくらい心理的に傷つく子どももいるかもしれない」とのことで,マスク依存を防ぐより,子どもの意見を尊重し,選択肢を与える方が,心の健康にはずっとメリットがあると訴えている。

 要は,マスクをするのもしないのも,大人であれ子どもであれ,自由に選択すべきだということ。来月13日からは,一応お上の“お墨付き”をもらえる訳だから,互いの自由意志を尊重しながら行動すれば良い…とはいえ,第8波の1月の死者は計9千人を超えるなど,感染の流行は依然として深刻で,数年は人口の数㌫が常時感染する状態が続くとの試算もある。また,今回のマスク緩和及び大型連休後の第5類への“格下げ”は,科学的見地よりも,5月の広島サミットを成功させるための政治的判断だとの指摘もある。

 とにかく,コロナであれ,インフルエンザであれ,花粉症であれ,マスクの着用が効果的であることは明らかだ。そのうえで一人一人が自己責任で決定するしかない。零細スタンドの経営者としては,一日たりとも寝込んでなどいられないので,やはり今後もマスクは常に持ち歩くことになるだろう。私は,マスクはTPOに合わせて着ける“顔ネクタイ”だと思っている。

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