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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.938『戦争の終わらせ方』

社会・国際

2023-02-27

 ロシアがウクライナ侵攻を開始して1年が経った。戦争解決の糸口は見られない。どちらかが軍事的に勝つのは難しく,交渉が進むようにも思えない。報告によると,この間のウクライナとロシアの兵士の死傷者はおよそ30万人に上る。また,民間人約3万人が死んだと考えられているが,実際の数はさらに多くなる可能性がある。

 侵攻当初は,ロシア軍がキーウを制圧するのは時間の問題と見られていたが,ウクライナ軍が1か月足らずでこれを押し返すと,西側諸国の漸進的な支援を受けて攻勢に転じ,ロシアはウクライナ国土の2割にも満たない地域に留め置かれることになり,戦闘はこう着状態のまま今に至っている。

 今後,春の到来と共に,ロシア軍は再び大攻勢を仕掛けてくると見られているが,一方でウクライナ軍が機先を制して領土奪還を試みるのではとの予想も。世界が固唾を呑んで見守る中,決戦の日が近づいている。その結果がどんなものであれ,世界はますます混迷を深めてゆくことになるだろう。

 戦争が一日も早く終わることを願っているが,ウクライナが侵略された領土を明け渡してでも停戦に応じるということは,現時点では考えにくい。では,ロシアが停戦せざるを得なくなるような状況は生じるか。これもなかなか難しいと思うが,昨年12月にG7がロシア産石油の取引価格に上限を課してからロシアは価格交渉力が低下し,大幅なディスカウントを余儀なくされている。このことが油価依存型のロシア経済に大きな打撃を与えているという。

 ロシアは今年の予算案想定油価を1バレル70㌦に設定していたが,12月の平均価格は50㌦まで下落,現行水準は原価スレスレの40㌦台で推移しており,財政収支は急速に悪化している。12月は約6兆円,1月は約3兆2000億円の赤字を計上。米ブルームバーグ通信は「ロシアはウクライナを上回る経済損失を出している」と分析している。

 支出面では戦費が重くのしかかる。米誌「フォーブス」によると,ロシアはミサイル80発余,自爆型ドローン20機余を投入して全土攻撃を行う場合,4億〜7億ドル(約540億〜945億円)を費やす。また,志願兵や動員兵らに平均月収の4倍以上を給付するとした約束を履行しようとすれば,30万人規模の動員兵だけでも財政負担は大きい。さらに,ロシアでは動員を避けて数十万人が国外に脱出したとみられ,中間層・富裕層の消費落ち込みも問題となっているという。

 とにかく,軍事力でウクライナが優勢に立ち,ロシア軍がクリミア半島の一角にまで追い詰められるようなことになれば,プーチン大統領は核兵器の使用も辞さないかもしれない。それだけは何としても避けたいというのが,世界の大多数の願いだ。油価低迷により露経済が破綻の道を歩み,戦費が枯渇・消滅するに及んで,遂にプーチン大統領は停戦・終戦を余儀なくされる─。これがいま考え得る最も現実的で安全(?)な戦争終結の道筋だと,多くの専門家が期待を込めつつ予測している。果たして,そんなに(西側の)都合良くゆくものか…。

 それにしても,戦争を始めるのは簡単だが,終わらせるのは本当に難しい。太平洋戦争における日本も,敗北が決定的になっても,軍指導者は何とか最後の一撃を加えたうえで,少しでも有利な条件で和平に持ち込みたいとの幻想に固執し,いたずらに犠牲を増やしていった。結局,ソ連参戦と原爆投下によってようやく白旗を掲げることになったが,残留孤児や被爆者といった,本来避け得たであろう犠牲者を出すに至った。

 思うに,国際社会は,いかに戦争を回避または抑止するかということに多くの時間と予算と労力を割いてきたが,ひとたび戦争が始まってしまったらどうやって終わらせるかについては,当事国任せというか,成り行き任せという感じで,ほとんど無力だ。唯一の仲裁者であるはずの国際連合がまったく機能しないことは,今回の戦争においても明らかになってしまった。諸国家が会議の場でいがみ合っている間にも,破壊と殺戮は続き,食料不足や環境破壊が拡がってゆく。こうなったら,地球規模の大災害が起きるか,類例のないパンデミックが生じるか,地球外から知的生命体による攻撃を受けるかでもしない限り戦争は終わらないだろう。

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