セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.943『ヘルスケアとGS』

政治・経済

2023-04-03

 『出光興産は特約販売店と協働し,同社系列の「アポロステーション」を,生活支援基地とする事業領域「スマートよろずや」の取り組みを進めており,この取り組みの一環として,出光リテール販売が運営する愛知県内の3カ所で,VRゴーグルを用いた「脳機能測定」のサービスを3月25日から6月30日まで期間限定で提供している』─3月29日付「油業報知新聞」。

 脳機能測定は,最先端の技術で脳の認知機能の低下を初期段階で発見できる。今回のサービスは,VRゴーグルで仮想空間を行ったり来たりしながら脳機能の診断を行ない,アルツハイマー型認知症の兆候を早期に発見できるという。認知症の原因の約7割を占めるアルツハイマー病は,発症まで20~30年もの年月をかけて進行するといわれており,40代50代は“隠れ認知症世代”とのこと。特に40代後半になると約半数が,アルツハイマー病の最初期に入っているんだそうだ。

 出光は,2021年10~12月に「スマートよろずや」の実証実験第1段として,静岡県島田市で脳ドックサービスを行なった。その後,このサービスがあちこちの出光GSで展開されているわけではないが,GSと脳診断とは相性がいいと判断したのか,第2弾は脳機能測定となった。今回トライアルする3店舗のうち2店舗は愛知県・日進市,つまり,私の店のご近所。最近,家族に“認知症じゃないの?”とよく言われるから,俺も診てもらおうかな…。ただし1回5,500円もかかるそうで,ちょっと躊躇してしまう。

 なぜ,今回日進市の店舗が選ばれたのかは知らないが,私の店の来店客も高齢者がかなり多い。以前,年配の女性に呼び出され応対したところ,自分が乗ってきた車はどれだったかしら,とおっしゃる。計量機2台の小さな店だが,たまたま4レーンすべてが似たような色の軽自動車で埋まっていた。女性は,販売室でプリカを購入した後フィールドに戻ったら,自分の車がどれだったか分からなくなってしまったという。

 こんな方が来店したら,迷わず「お客様,ちょうどいま脳機能診断を行なっておりますので是非ご利用ください」と“声かけ”しなくちゃいけない。でも,もし診断で認知症と“確定”してしまったら,その人が運転するのを容認していいんだろうか。万が一,その人がGSを出たあと,暴走や逆走なんかして事故を起こしてしまったら,GS側も“血の責任”を負うことにならないだろうか,などと心配になる。

 全国の65歳以上の認知症の人は約600万人と推計されているが,2025年には約700万人になるとのことだ。自覚症状なく,じわじわと時間をかけて私たちの脳が侵食されているわけだ。いまのところ,認知症を完全に治す治療薬はない。それでも,早い段階で認知症であることが分かれば,その進行を遅らせることはできるそうなので,脳機能診断は壮年期から行なったほうが良いらしい。VRは診療だけでなく,脳神経経路に刺激を与えシナプスを増加・強化させるのにも有効なんだとか。もし本当なら,保険適用で機器とソフトを購入ができるようにして,自宅で“脳トレ”できるようにすればいいんじゃないだろうか。

 世界に類例のない高齢者大国となる日本では,ヘルスケアへの関心はますます高まり,2025年には市場規模は約33兆円になる見通しだ。この巨大市場に多くの新規参入者が群がってきているようだが,果たしてGSとベストフィットの分野は何なのだろう。“給油に行ったついでに”という感覚で,脳の検査をするというのはちょっと飛躍しすぎのような気がする。スポーツジムやドラッグストアを併設しても,コンビニやカフェと同様,それほど大した相乗効果をもたらさないだろう。そもそもGSとコラボして成功した業態なんか過去に一つでもあっただろうか。

 セールスルーム内で健康食品を売ったり,介護用品をレンタルしているGSも在るやに聞くが,ありがちなのは,“地域社会の生活応援基地をめざす!”などと大仰な構想をぶちあげておきながら,いつのまにか売り場がなくなっているというケース。むしろ,あまり気負わず,あれこれ試しているうちに“金脈”が見つかるかも。横須賀市にある増田商事という会社では,運営するGSで30年前に洗車機用水として井戸を掘ったところ,良質の温泉が沸きだし,2005年からこれ入浴剤として販売,好評を博しているとのこと。(https://tsuku2.jp/onsen_m) うらやましいですな。油田ならぬ“湯田”を掘り当てたというわけだ。

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