セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.946『洗車の日』

GS業界・セルフシステム

2023-04-24

 最近,この時期の天気予報は「花粉情報」に加えて「黄砂情報」も提供されるようになった。中国内陸部のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠で舞い上がった砂が偏西風に乗って,中国華北地方,さらには朝鮮半島や日本列島にまで降り注ぐ。今年は過去40年で最悪レベルと言われている。原因として,今年は雨が少なく,乾燥が進んだことで,例年以上に砂が巻き上がりやすい状況となっているとのこと。やっぱり地球温暖化のせいじゃないだろうか。

 黄砂には,微生物やその死骸,金属,化学物質など,多くのアレルギーを引き起こすものが含まれている。黄砂が大陸から日本に飛来するまで,だいたい48時間ぐらいかかるが,途中,工業地帯などを通過すると,有害物質も付着する。最近の報告では,微小なマイクロプラスチックが混じっていることもあるそうで,黄砂が飛来する日には,なるべく外に出ないほうが良さそうだ。


 有難くない黄砂だが,GS業界には“恵みの砂”だ。奇しくも4月28日は4=「よい」,2=「つ」,8=「や」で「良い艶」という語呂合わせになり,自動車用品小売業協会によって「洗車の日」に制定されている。ちなみに11月28日も「いい艶」ということで,「洗車の日」は年2回あるそうだ。ちなみに自家用車を持つ男女約1200人に行ったアンケートでは,四人に一人が1ヶ月に1度洗車をしている一方,1年に1度という人も2割近くいるらしい。

 滅多に洗車しない人も,さすがに黄砂でドロドロになった車はできるだけ早く洗車したいところだが,カーケアの専門家に言わせると,ゲート型洗車機で洗うのは厳禁。洗車機は車の上を移動しながら水流をかけると同時にブラシで汚れを落とすのだが,黄砂が付いたままブラシでこすると,車にヤスリをかけるのと同じ状況になる。いまの洗車機のブラシは素材が柔らかく,汚れを落としやすいものが使用されているものの,黄砂の成分や粒子の大きさは一般的な砂ボコリの比ではないという。

 お勧めは高圧洗浄機でしっかり砂を洗い落としたあと,シャンプー水を含ませたスポンジで残った汚れを落とすというやり方。でも,高圧洗浄機のある家なんてざらにはないし,マンションの駐車場で共用水栓を使用してジャブジャブ洗うなんてNGだから,やっぱり手っ取り早く洗車機で洗っちゃうしかない。何より安い。何千万円もする高級車でもなければ,洗車機で十分だと思うのだが…。


 以前,洗車専門店に勤める知人と,たまたま黄砂混じりの雨が降った夜,会食したとき,「あすは朝からフェラーリのコーティングの予約が入っている」と,ぼやいていた。持ち主は,車体を舐めるようにチェックして出来栄えを確かめ,ちょっとでも汚れや傷があろうものなら大騒ぎするそうで,精神的に相当キツイ仕事なのだという。総額10万円を越す作業だが,「できればやりたくねぇよ」と─。


 若いころ,まだ洗車が無料サービスだった時代,来る日も来る日も手洗い洗車をしてきた経験から“車なんか洗車しなくったって走るじゃねぇか”という考えの持ち主となった私(苦笑)には,車を洗ったり磨いたりすることに何万円も払うなんてナンセンス!なのだが,洗車サービスの市場規模は堅調に拡大しているそうだ。GSなどで提供される一般的なサービスは約2000億円程度で,洗車専門店などが提供する高付加価値サービスは約300億円と推計されており,今後も伸張すると見られている。コロナ禍で三密を避けてマイカーで移動する人が増えたことで,愛車を綺麗にしようという意識が高まったことが追い風となっており,最近では出張サービスの業者も増えている。

 ところで,「洗車の日」だが,協賛する日本オートケミカル工業会によれば,「最終的に目指すところは,安心安全なカーライフを実現することです。クルマをきれいにすると精神的に余裕が生まれ,丁寧な運転につながります。その結果,交通事故も減ります。安心安全なクルマ社会を創出してまいりたいと思います」(渕田昌嗣理事長)とのことだ。つまり,洗車機を通したり,業者の人に洗ってもらうんじゃなく,ホームセンターで洗車用品・用具を購入し,自分で汗をかきながら,愛車にこびりついた黄砂と共に日頃の雑念をも洗い流すことで,心身ともにリフレッシュさせ,平和で安全な社会に貢献しようという,実に高邁な理念が「洗車の日」には込められているのだ。

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