セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.95『若きジェダイよ、余に仕えよ』

エンタメ・スポーツ

2006-02-06

 「若きジェダイよ、暗黒面(ダークサイド)を受け入れ、余に仕えよ!」─ご存知、「スターウォーズ」シリーズで、銀河帝国皇帝・パルパティーンが、ジェダイの騎士・ルーク・スカイウォーカーを自らの配下に取り込もうと誘惑する場面である。ルークの父、アナキン・スカイウォーカーもまたジェダイの騎士だったが、皇帝の強大な力に抗し切れず、暗黒卿・ダースベイダーとなってしまったのだった─。

 いつの時代も、若者の創造力・行動力が未来を切り拓いてゆく。しかし一方で、パルパティーンのように、そうした若者たちの純粋さや廉直さに巧みにつけ込み、それを我が意のままに操ろうとする者が現われるのもまた、世の常である。ガソリンスタンド業界とて例外ではない。

 元売会社は、大抵、自系列の特約店会の中に“二世会”なるグループを作り、将来有望なスタンド経営者の子息を集め、勉強会や研修会を催している。それはそれで結構な事なのだが、元売のもくろみは、とどのつまり、自社の特約店戦略を疑うことなく実践するアンドロイド兵たちを養成することにあるのではないか。

 セルフ時代を迎えたいま、元売は系列チャネルの直営化を着々と進めている。様々な面でコストのかかる特約店制度は、一刻も早く無くしてしまいたいのが本音だろう。しかし、本音をそのまま伝えるようなことをすれば、スムーズな移行期間を損なう恐れがあるため、むしろ本音とは正反対の事を強調するようになる。

 ここ数年、元売幹部が異口同音に口にする言葉の一つに「パートナーシップ」がある。特約店が、元売との信頼関係に疑問を抱きつつある昨今だからこそ、それを打ち消そうと、やたらこの言葉を連発しているように思えてならない。夫婦関係になぞらえれば、急に相手が「愛してる」とか「大好き」なんて言い出したら、「コイツ、何か頼み事か隠し事があるな」と疑ってみたほうが良いということになる。

 「それはあまりにひねくれた考えだ。元売は我々の事を本当に必要だと思っているのだ」と反論するのは、情熱と理想に燃える若き経営者たちである。「少なくとも、私の会社については元売から将来性を担保されている」と胸を張る彼らの瞳には、一点の疑念も見出されない。しかし、それでいいのだろうか。別に、私が心配する義理はないのだが、元売が進めるセルフ政策(店舗の大型化、施設の画一化、システムの統一化、顧客のクレジット化など)は、どう見ても将来の直営化のための布石であり、それを忠実に遂行する経営者たちは、帝国の臣下と化したダースベイダーのようにも見える。その末路は、利用された挙句に、時が来れば捨て去られるという悲惨なものだ。

 吹けば飛ぶようなガソリンスタンドでも、そこには経営者とその家族、従業員とその家族の生活がかかっている。その命運を、元売の手に委ねてしまって本当に良いのか。後になって、「あの時こう言ったじゃないか」と元売に訴えても無駄である。最終的な決断をしたのは経営者本人であって、元売ではないからだ。

 セルフ時代・原油高騰時代を迎えた若きスタンド経営者たちには、先代が経験したことのない苦労があることだろうが、それだけに自らの持てる力を存分に発揮して、新たな時代を切り拓くというやりがいもまたあるはずだ。しかし、その活力こそが、支配者たちにとって脅威であり、それゆえに、取り込もうとする誘惑の力フォースは大きく、それに抗するのは容易ではない。時代を担うスタンド業界の“若きジェダイたち”にいま必要なものは、武将に求められる「猜疑心」である、とは言い過ぎだろうか。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ