セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.97『グローバリゼーションについて』

社会・国際

2006-02-20

 先月20日、米国から輸入された牛肉に特定危険部位である背骨が混入していた事が分かり、即日、米国産牛肉の前面輸入停止が発表された。公開された写真を見れば、素人の我々でもすぐにそれと分かる見事な“骨付きカルビ”の塊で、何でこんなものを米国の検査官が見過ごしたのかと首を傾げたくなる。しかし、その後の米国当局の逆ギレぶりを見る限り、彼らはもともと日本の設けたルールをきちんと守るつもりなどなかったのではないかと疑いたくなる。

 さらに、今月に入り、米国内の食肉処理施設が歩行困難牛(へたり牛)20頭を原因不明のまま食肉処理していたことも判明、改めて米国の検査体制のずさんさが浮き彫りとなった。その後、米農務省は、へたり牛は皆、検査をパスした直後に足をけがしたものだという調査報告を発表したが、それを鵜呑みにするほど、消費者はアホではない。

 それにしても、「我々の定めたルールが世界のルール」という、この傲慢さは一体何なんだろう。かつてヘンリー・キッシンジャーは、ある大学講演で、「グローバリゼーションと呼ばれているのは、実のところアメリカ合衆国による支配の別名である」と語ったそうだが、さもありなんと思う。

 我々の業界は、この「アメリカの支配」をモロに受けている業界である。世界の民間企業の中で最も利益をあげている会社─エクソン・モービルは、世界の、そして日本の石油業界の支配者である。上流部門である原油価格については、これはもう100パーセント輸入に頼っている以上、抗いようのないものだが、彼らの支配力はそれにとどまらず、下流部門であるガソリンスタンドの運営形態にまで及んでいる。世界一の多国籍企業が、東洋の島国におけるガソリンの売り方までいちいち世話を焼かなくても良さそうなものだが、そこはグローバリゼーションの権化・エクソン、手抜かりはない。とりわけ、セルフ戦略における彼らの定めたスタンダードは、他の元売と比べて、きわだった存在といえる。画期的クレジット決済ツール「スピードパス」の導入や、ドトールコーヒーやセブン-イレブンとのコラボレーションなどによって、自称“業界最先端”のセルフシステム「エクスプレス」を開発、全国展開させているのだ。

 しかし、いまから10年以上前に、当時のエッソ石油の重役が「日本でセルフが解禁されたら、我々はトップシェアを占めることになるだろう」と豪語したらしいが、現実にはそうは問屋が卸さないばかりか、エクソンは日本市場に成長性を見込めないと判断し、事実上撤退するのではないかとのウワサが後を絶たない。

 真偽の程はどうであれ、日本におけるエクソンのセルフ戦略が、これまでのところは他社を圧倒するほどのものではない事は明らかだ。エクソンのスタンドだけが、特別繁盛しているわけではない。依然として現金払いが日常化しており、欧米とは異なるコンビニ文化を持つ日本では、「世界のスタンダード」も、そう易々とは浸透しないようだ。

 米国に向けて輸出される日本の自動車は皆左ハンドルだが、米国から日本に向けて出荷されるそれは、大半が左ハンドルのままだ。右側通行の国の人々のことをまったく配慮しないでおいて、「日本市場は閉鎖的だ」なんて文句を言っても始まらないではないか。牛肉問題とて同じ事だ。セルフシステムもまた、日本の商習慣や国民性を考慮に入れたものとしない限り、成功することはないだろう。

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