セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.999『最先端の先にあるもの』

政治・経済

2024-05-06

 『米テスラが急速充電器を担当する部門を事実上閉鎖し,担当幹部と数百人の従業員を解雇したことがわかった。同社の急速充電器は世界最大級のインフラ網を持ち,独自の充電規格「NACS」は米国の標準規格にも採用されている。事業は今後も続けるが,新規拠点の拡大は遅らせる見通しだ。テスラの規格を採用する他の自動車メーカーのEV戦略や,米国など各国政府が進めるEV充電網の整備に影響する可能性もある』─5月1日付「日本経済新聞」。

 テスラの急速充電器は世界最大のインフラ網を持ち,世界で5万基以上が稼働している。同社によると,1~3月期に急速受電器の設置数は前年同期比で26㌫増加した。だが,E・マスクCEOは4月30日に自身のXに「設置ペースが遅い」などと不満を投稿したとのことで,結局EV普及は“卵が先か,鶏が先か”というパラドックスから脱却できないまま今日に至っている。

 この3か月のEVの販売台数38万6810台は,前年同期比8.5㌫減,前四半期比では20.2㌫減となり,テスラは全世界の従業員の約1割に当たる6千人をレイオフすると発表,このたびの急速充電器部門の閉鎖はその一環のようだ。テスラはこれからどう舵をきるのか─世界の投資家が注視する中,マスクCEOは4月28日に中国を電撃訪問,李強首相ら政府高官と会談した。マスク氏は,中国での市場拡大にとどまらず,運転支援システムの開発を加速させるために,中国政府の協力を求めたと報じられている。

 安全規制の厳しい欧米や日本でちまちま試験走行をしていたんじゃあ埒があかない,ここはひとつ中国を巨大な“実験場”として,一気に自動運転技術を実用化し,形勢挽回を図ろうとしているのでは。人の命よりも国益を優先する国だからできることだ,と負け惜しみを言う日本人は多いが,中国がこの分野では他国より一歩も二歩も進んでいることは間違いない。そして,ここにテスラの先端技術を取り入れることができれば…との中国側の思惑とが一致し,テスラはIT大手 百度(バイドゥ)のマッピング並びにナビゲーション機能を使用することが許された。これによって,テスラは中国において規制を受けずに運転支援システムが開発できることとなり,早速同社の株価は米市場で急騰した。

 ところで,中国ではいま,デジタルカメラが若者のあいだでブームになっている。海外セレブやK-POPアイドルがデジカメで撮った写真をSNSにアップ,画素数の多いスマホカメラでは表現できない,少し色褪せた,ノスタルジックな味わいの写真がZ世代にウケているのだという。昨年上半期のデジカメの販売台数は,前年同期と比べて15倍になり,価格も5~10倍の値段になっている。だが,このブーム,どうやら“裏”があるとのこと。一昨年,政府の「ゼロコロナ」政策への不満や,言論統制への批判を込めて,中国各地で吹き荒れた「白紙運動」以降,中国指導部は,若い世代の動向に神経を尖らせ,ネットでの表現や言論の監視を強化している。若者たちは自衛手段として,データがネットに流出しにくいデジカメを活用しているというのだ。

 その流れで行くと,中国がテスラの力を借りて開発した運転支援システムを搭載したクルマを運転したら,だれが,いつ,どこに行き,どれぐらい滞在したかといったデータが記録・送信されるかも。自動走行によって,前例を見ない数の電子メールやメッセージ,電話による通話にアクセスされるようになったり,動くカメラとなって数々の重要なインフラを撮影することも考えられる。そんなクルマが,全世界に輸出されれば「“トロイの木馬”になり国家安全保障上の脅威となる」と,米国下院のテロ対策・情報小委員会は警戒感をあらわにしている。

 どこまで,現実味のある話と言えるかはさておき,中国だけでなく,どの国家も国民の動向を監視したり,他国の情報を入手したいと考え,古来よりあの手この手を尽くしてきた。所得や資産,健康状態,職業や嗜好,思想や宗教などなど,私たちはすでに多くの個人情報をネットを通じてさらけ出しており,この先,「安全」「安心」の名のもとに,さらに多くの個人情報が収奪されてゆくことだろう。「最先端」の先には,光だけでなく闇もあるということを意識していなければならない。

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