セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.828『飲みニケーション』

社会・国際

2021-01-18

 『飲みニケーションとは,コミュニケーションの形式の一つ。“(酒を)飲む”と“コミュニケーション”の合成語である。飲みニケーションにおいては,居酒屋や居室等に集合し,酒を摂取しながらコミュニケーションを行う。酒に含まれるエタノールによって,参加者は酔い,脳が麻痺するため,抑止力が低下し,本音で話ができる等の変化が起こる』─「Wikipedia」より。


 大真面目な解説文を読むと笑ってしまうのだが,確かに,お酒はコミュニケーションを図るうえでの“潤滑油”となり得るものであり,私自身もこれまでお酒を飲みながら数多くの人たちと楽しいひと時を過ごしてきた。ただ,酒を飲まなくなったいまになって振り返ると,飲まなくても楽しいひと時は過ごせたと思うので,要は自分が飲みたかったからだけなのだろう。酔っ払いに付き合ってくださった皆さん,ありがとうございました。(笑)


 ひと昔前は,職場における「飲みニケーション」は,仲間意識や連帯感を強め,組織の風通しを良くするための効果的な手段とされてきた。だが近年,女性の社会進出や“多様な働き方”などを背景に,「飲みニケーション」は忌避されるようになっている。「飲みニケーション」が行われている時間帯が勤務時間だとすれば,会社は部下に残業代を払わなければならないし,飲食の代金は経費として会社に請求すべきだろう。何かあれば労災の対象にもなり得る。そうした区別が不明確な状況は「働き方改革」に反する。


 また,「飲み」の場で上司が部下に話したがる昔の経験談は,ビジネスモデルが大きく変化する中で,もはや役に立たなくなってきており,時代遅れの単なる自慢話でしかないとの指摘や,酔いが回り,気が大きくなった上司の言動が,パワハラやセクハラの温床になってしまう恐れもあるとのこと。もはや「飲みニケーション」は完全にオワコンとなってしまった感すらある。


 そんな状況の中で,コロナウイルスが登場し,是非を問うまでもなく,「飲みニケーション」はご法度となってしまった。「飲みニケーション」の代表格である,職場の忘・新年会は,ほとんどの企業が取りやめた。ネット上では「コロナの影響で会社の忘年会が中止になった。個人的に誘われてもコロナを理由に断れるので嬉しい!」(30代/会社員)とか 「職場は仕事をする場所なので,そもそも飲み会で親睦を深める必要はない。今年は堂々と忘年会スルーできる」(20代/契約社員)といった歓迎の声が多く寄せられた。


 確かに,本音で語り合ったり,率直な意見交換をするために,「エタノールによって脳を麻痺させ,抑止力を低下」させなければならないなんておかしいよね。少なくても,職場での「飲みニケーション」は,コロナ禍を契機にやめたほうがいいと思う。そもそも,「withコロナ」時代となって,職場そのものの構造改革が求められているのだから。


 欧米に比べて,日本はテレワークで大きく遅れをとっており,第一経済研究所が2018年に発表した報告書によると,東京に約262万人が通勤することによる機会損失は,8.6兆円に達するとのことだ。一方,テレワークの普及が増加すると,経済効果のみならず,CO2の削減や少子化に歯止めをかけることにも寄与するとの分析結果も出ている。本来,テレワークはコロナ禍が生じる前から推進すべきことだったのだ。


 GS業界は,長らく給油作業を通じてお客と接する,いわば「汲みニケーション」を通じて,再来店の促進やカーケア商品の販売に励んできた。セルフになっても,このスタイルを踏襲していたが,これもコロナ時代となったいま,難しくなりつつある。もはやオフラインでのコミュニケーションは,敬遠され,廃れて行くのではないか。セルフスタンドも,もう一段の進化,すなわち「無人化」に向けた法改正やシステム開発をいまこそ進めるべきである。このまま何の改革もしなければ,せっかくのコロナ禍での経験が無駄になってしまう。

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