セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.668『寿司屋にて』

オピニオン

2017-07-31

  時々お昼を食べに行く近所のお寿司屋さんは,60代の親父さんと女将さんとでやっている小さなお店。「にぎり寿司」が一人前1,600円。しょっちゅう食べに行けるほど安くはないが,親父さんが吟味した新鮮なネタで握る寿司が本当においしくて,コストパフォーマンスはきわめて高い。私は,いわゆる“ひかりもの”が苦手なのだが,この店のコハダは絶品だ。私は,この「にぎり・1,600円」を自分の中での“ランチのデッドライン”としていて,洋食だろうが中華だろうが,この基準よりお得かどうかで評価を下している。以前,築地市場の中にある寿司レストランで食べた寿司ランチは,価格が倍近くあったのに全然おいしくなかった。あんな寿司を「スシィ!」と喜んで食っている外国人は気の毒としか言いようがない。

 ある日のこと,カウンターで妻と二人でうまそうに寿司をほおばっていると,親父さんがポツリと「こんなに美味しい寿司を出しているのになんでもっとお客さんが来てくれないんだろうなぁ」と,珍しく弱音を吐いていた。「そんなことないでしょ,よくお客さん入ってるじゃない」と私。「いや~このところ暇でねぇ…」と親父。確かにその日は11時半ごろで客は私たちだけだった。「きっと暑いからお店に来るのもおっくうなんだよ。ここは年配のお客さんが多いから」。「そうなんですよね~。最近あの人いらっしゃらないなぁと思っていると,亡くなられたとか,施設に入られたとか…」と女将さん。「それに,最近「かっぱ寿司」が食べ放題キャンペーンとかやってるらしいから,食べ盛りの子供連れはそういうところに流れるかもね」。「へぇ~,食べ放題ですか~。採算合うのかしらねぇ」─。

 美味しいものを手ごろな価格で出したいとの思いでがんばっているが,高齢化と価格破壊の波の中で苦戦しているようだ。「ガソリンスタンドはもっと悲惨だよ。どこで給油しても同じなんだから,もう価格下げるしかないんだもん。それでも年々売れなくなってきてるから,もうお先真っ暗ですよ。ここにもあと何回来れることやら」。「また,和田さん,冗談やめてくださいよ」。「いや,マジですよ。きょうは「土用の丑の日」だけれど,鰻屋さんなんて,とても行く気になりませんよ。ここでお寿司食べるのが最高の贅沢ですよ」─。

 かつて,フルサービスは,セルフにはない,お客様とのふれあいやプロの技術を提供することで,お客様に満足していただけるとして“セルフより10円高でもお客は来る!”と業界誌などで力説していたGS経営者がいたが,最近名前を聞かないなと思っていたら,いつもまにか“普通のセルフスタンド”に衣替えしていた。銀座の高級寿司店じゃあるまいし,やはりGSはどこまで行ってもコストで勝負せざるを得ない。問題は,「かっぱ寿司」のように期間限定ではなく,エンドレスで採算度外視の安売りをしていること。そして,その穴埋めを無理な油外販売で賄おうとしていることだ。

 『「交換しないと危険」と言われタイヤやオイルなどを交換したが,後でなじみのディーラーに相談したら「必要性は疑わしい」と言われた─。ガソリンスタンドでの自動車整備を巡る国民生活センターへの相談件数が,2013年ごろから急増し,15年以降は60~70件で推移していることが同センターへの取材で分かった』─7月31日付「毎日新聞」。

 無知に付け込み“いつ止まってもおかしくない状態”などと脅し,高い商品を売りつけるという阿漕なGSはむかしからあって,そういう店が元売から成績優秀店として表彰されたりしていたが,近年,そうしたトラブルが増加しているところを見ると,GS業界全体が相当追い込まれているのかなと思う。ガソリンで適正な利益を出せないものだから,過度の油外ノルマを課された挙句,強引なセールスでその場しのぎの成績を上げようとする─。ボリューム至上主義の中で,適正利潤をなおざりにしてきた結果,このような“ぼったくり店”を増殖させているのだとすれば恥ずべきことだ。

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