セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.741『ステルス値上げ』

政治・経済

2019-02-25

 スターバックスコーヒーは2月15日から「ドリップコーヒー」など定番飲料の価格を10円から20円程度引き上げた。また,カレーハウスCoCo壱番屋は3月から988店舗で「ポークカレー」を21円引き上げる。日清食品は「チキンラーメン」や「カップヌードル」などを6月から希望小売価格ベースで4~8%引き上げる。原材料価格の上昇に加え,人件費や人手不足の影響による物流コストの高騰が,値上げの原因だが,実はこれまでも見えにくい形で値上げが行われてきた。人呼んで“ステルス値上げ”。『企業などが商品の価格を据え置いたまま内容量を減らす現象のことで,英語の「ステルス(こっそり行う)」に「値上げ」を合わせた造語。実質的な値上げでありながら消費者が気づきにくいことを表している。「サイレント値上げ」とも呼ばれる』─「Yahoo!辞書」より。

 価格に敏感な消費者の買い控えを回避しながら,コストを転嫁する苦肉の策で,例えば4月1日出荷分から1.5~3.5%値上げする「明治おいしい牛乳」は,16年から18年にかけて全国で順次,新しいパッケージに変更した際,価格はそのままで,容量を1㍑から900㍉㍑にして,実質的な値上げを行なった。明治は,「遮光性に優れた容器や注ぎやすいキャップを採用した」とか,「横幅を小さくし,持ちやすくした」などの“メリット”を強調したそうだが…。イギリスではこの現象を,「縮む」を意味する「シュリンク」と「インフレーション」を掛け合わせた「シュリンクフレーション」と呼んでおり,4~5年前から顕著となり,消費者からは不満が続出したため,複数の消費者団体が,「シュリンクフレーション」は消費者を欺く行為だとメーカーや小売店を強く非難する事態となっているとのことだ。

 確かに,ちょこっとでも増量したときは,パッケージにでかでかと「増量しました!」と謳うくせに,減らすときはこっそりと,それも“持ちやすくなった”だの“おしゃれになった”だのと,まるでいままでより良くなったかのように見せかけて売るのは姑息なやり方に思える。裏を返せば,どんな業界も,値上げにはビクビク,ヒヤヒヤ,ハラハラしているということ。GS業界は,商品を袋や箱,ボトルに入れて売ることはできないから“ステルス値上げ”は出来そうもないが,価格を安く見せようというテクニックは幾つかある。

 例えば,会員価格。GS業界では古来から伝わる手法で,会員カード等を提示しなければ適応されない価格を,あたかも一般客も給油出来るかのように大きく表示して呼び込むのだが,最近では「コストコ」などにお株を奪われた感もある。「会員限定」を口実に,原価並みの価格で売られてはもはや太刀打ちできない。周辺GSは堂々と「一般価格」を掲げるよりほかない。

 消費税導入に伴い,小売店では総額表示,つまり消費税を含んだ表示をすることが義務付けられているが,外税価格を表示して安く見せようとするGSもある。違法かと言えば,そうではない。国税庁は『消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から,総額表示義務の特例として,平成25年10月1日から平成33年(2021年)3月31日までの間,「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」を講じていれば税込価格を表示することを要しない』としている。しかし,「税込価格であると誤認されないための措置」って,どこまでのことをすればいいんだろう。10月には消費税が10㌫になる。どうなることやら。

 ほかにも,小数点以下の価格を表示したり,「ガソリン20㍑以上で洗車無料」など,いろいろな手を使って安く見せようと涙ぐましい努力をしているGS業界だが,まだ恐らくだれもやったことのない方法は,「1㍑あたり」としている価格表示の基準を,0.9㍑に変更すること。例えば,1㍑あたり135円を140円に値上げする際,0.9㍑あたりで表示すれば126円!0.95㍑でも133円に見せかけることができる。これぞGS版「ステルス値上げ」だ!

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