セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.752『補助金』

GS業界・セルフシステム

2019-06-10

 全国石油協会の支援事業の受付が先月27日から始まっている。つまり,補助金の申請のことで,今回は緊急用タンクローリーの購入と,POSシステムの導入にかかる費用を最大50㌫の補助率まで国庫から負担するとのこと。正式名称は「機動的燃料供給体制等構築支援事業」。

 まず,タンクローリーの方は,10㌔タンク未満であれば上限400万円,それ以上なら1,000万円までで,用途は緊急配送用とされている。業転ガソリンを油槽所まで蔵取りしに行くためのものじゃなくて,あくまで災害時などに「機動的」に供給するためのものでなければならない,ということ。

 POSシステムの導入補助については,全石協のホームページに次のような能書きが。『本事業は,災害時に地域の燃料供給拠点としての役割を果たす給油所のPOS導入を支援することで,災害時の石油製品の安定供給体制を構築することを目的に実施する事業です。 具体的にはPOS本体・外設機・周辺機器等の機器を導入する際の設備購入費用の一部補助を行い,給油所の営業情報等の効率的な収集・発信体制の整備を図ります』

 「災害時の安定供給体制の構築」のためのPOSとは何ぞや。昨年の9月に北海道で起きた地震の際は,大規模な停電が発生し,POSはおろか計量機そのものが動かせない状況に陥った。「災害時」と「POS」との関連性がイマイチよくわからん。まずは,非常電源装置の設置を促進するほうが先じゃないかと思うのだが,仮に電力が確保されたとして,どういうPOSに更新するのが,「災害時」にふさわしいのか考えてみた。

 やはり一番心配なのは,決済が滞りなく行えるかどうかではないか。お国はキャッシュレス化を推進しようと躍起だが,クレジットカードにせよ,電子マネーにせよ,いま流行りのQRコードやバーコードを用いたユーザースキャン方式にせよ,いずれもインターネットを通じた決済システムに依存するため,災害時の脆弱性が危惧される。非常時にモノをいうのはやはり現金。もっとも,現金も役に立たず,物と交換しないとガソリンが買えない事態だってあるのだが,そんな状況はもはや“この世の終わり”に近い。

 ともかく,ネット回線による認証や決済を必要としない,スタンドアロン型POSの導入が「災害時」に「機動的」な供給を行えるシステムではないかと思う。いまや時代遅れと思われているPETカードなどが,実は災害時には一番スムースな決済手段となり得るのではないか。もっとも“代金の取りっぱぐれなんか気にするな。困った時はお互い様。タダでガソリン放出してやれよ”とおっしゃる方の前では恥じ入るしかないが…。

 「給油所の営業情報等の効率的な収集・発信体制の整備」のためともあるが,これもよくわからん理屈だ。災害後,通信網も復旧したとして,元売が各GSのPOSデータを収集し,本当に必要な地域の店舗に「効率よく」製品供給をしようという趣旨なのか。ここまで考えてきて,やはり今回のPOS補助金の本当の目的は,元売のインフラ整備なんじゃないかと思えてきた。「災害時」というのは方便で,とにかくあわてて合併したため,POSの統一化はまだこれからという状況だから,お国に働きかけて補助金をつけてもらい,系列店に新型POSの早期導入を半強制的に迫る─そんな元売のシナリオなんじゃないだろうか。考え過ぎか。補助金申請の締め切りは7月8日。いずれにせよ,補助金につられて“高い買い物”をさせられないよう,GS経営者は気をつけたほうがいいかも。

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