セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.799『所詮,ガソリンなんて…』

GS業界・セルフシステム

2020-06-29

 『石油元売り3位のコスモ石油が「スーパーマグナム」のブランドで販売するハイオクガソリンについて,エンジンの汚れを取り除く添加剤が入っていないのに10年以上,「使い続けるほどにきれいにしてくれる」という虚偽の性能を公式ホームページに記載していたことが判明した。同社は毎日新聞の取材に記載内容が不適切だったことを認め,4月にHPを修正した』─6月28日付「毎日新聞」

 「スーパーマグナム」は1992年の販売開始以来,「使い続けるほどエンジン内をきれいにしてくれる」と,洗浄効果を強調していたが,実際には汚れを「付きにくくする」添加剤は入っているが,「取り除く」添加剤は入っていなかったため,誤解を招く表現として,景品表示法違反の可能性もあると報じられている。また,毎日新聞は,そもそも元売各社が独自技術で開発したと喧伝しているハイオクガソリンが,元売り間のバーター取引でごちゃ混ぜにされていたとスクープ(?)しており,さらなる“疑惑”追求の構えを見せている。

 GS業界で,製品がバーターされていることを知らない人なんかいないだろうと思っていたが,系列店店主の中には驚くほど純真無垢な人がいて,このたびの報道を受け,「青天の霹靂だ」とか「裏切られた」などと憤りを顕わにしているようだ。しかし,いままでお客さんから“どうも最近,アクセルを踏み込んだ時の加速が違うようなんだけれど…”などと苦情を受けたGSが果たしてあったのかというと,ほとんどなかったに違いない。所詮,ガソリンなんてそんなものだ。

 そもそも,ハイオクとレギュラーの違いだってそうそうわかるもんじゃない。2006年に,三重県津市の昭和シェル系のGSで,レギュラーとハイオクのタンク配管が間違って繋がっていたため,過去10年間に渡り,166㌔ものレギュラーを「ハイオク」として販売していたという出来事があった。毎日,油種ごとの出荷量と在庫量をチェックしていればすぐに異常に気づいただろうから,当該GSの責任者はたわけとしか言いようがない。工事を施工した業者も,済証を出した消防署もマヌケ。だが,一番の問題は10年ものあいだ,消費者から何のクレームも受けなかったということだ。

 “驚きの性能を体感してください”なんて大仰な惹句で宣伝しても,その性能にほとんどの人は気付かない。テレビ朝日のバラエティ番組「芸能人格付けチェック」で, 100㌘1万7000円の松坂牛(A)と,100g㌘300円のウルグアイ産牛肉(B)を食べ比べ,“BのほうがAに比べて牛肉本来の旨みがあった”なんてコメントして茶の間の笑いものになっている芸能人みたいに“やっぱり○□※△のハイオクは踏み込んだ時の加速が違う”なんて言ってるお客さんが“実はレギュラーでした”と聞かされたら…。所詮ガソリンなんてそんなものだ。

 私はGS業界を貶めたいのではない。レギュラーにせよ,ハイオクにせよ,どこのマークであれ同じものだということを言いたいだけ。そして,系列であれ,PBであれ,同じ油槽所から運ばれてきたものだということも。それにもかかわらず,PBスタンドには,10日置きに品質検査が義務付けられ,その費用が年間19万円もかかる。なぜ,PBだけ?PBスタンドは,インチキガソリンを販売しているかもしれないという時代錯誤の差別としか思えない。むしろ“うちのガソリンはパワーが違う!燃費が違う!”なんて謳っていた元売系列店にこそ,適正な検査をお願いしたい。


 今後,毎日新聞の報道がどれほどの広がりを見せるかわからないが,いまさら石油元売りがバーターをやめるなんてことは考えにくい。ここは正直に非を認めて,「スーパー」だの「プレミアム」だのという紛らわしい名称を廃止し,全社「ハイオク」「レギュラー」に統一すればいいではないか。それは沽券にかかわるというのなら,今度こそ,バーターをやめ,業転も出さず,自社系列だけに卸してみればいい。系列店店主のみなさんも,コロナウイルスで臭覚障害に陥らないよう十分気を付けて,自社製品をしっかりと嗅ぎ分けてほしいものだ。

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