セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.485『自爆営業』

GS業界・セルフシステム

2013-11-16

 「自爆営業」というのをご存知だろうか。会社から課せられたノルマが果たせない社員が,自腹を切って商品を購入したりすることを指すのだそうだ。例えば,この時期,日本郵便が職員に課す年賀はがきの営業ノルマは3千から1万枚ほどで,ノルマを果たせない職員は1枚50円の年賀はがきを自腹で引き取り,金券ショップに1枚40~44円程度で流すしかないのだという。

 また,中小の旅行代理店では,企画したツアーにノルマを設けていて,営業できなかった社員が10万~20万円ほどの自腹で家族を連れていくと,一般客はゼロに近く“社員旅行状態”になることが良くあるのだとか。生保の営業社員の大部分は,新商品が出るたびに自腹で家族が加入する。そうしなければ,とてもノルマはこなせず,毎月の保険料が15万円を超える人もいるという。

 GS業界でもマネージャーやスタッフに様々なノルマが与えられる。事業所単位の目標数値がさらに従業員個々に振り分けられ,毎日毎時間,達成状況のフォローがなされるのだが,洗車やオイル,タイヤのように,お客様の視覚に訴える商品であればいざ知らず,水抜き剤とか○□強化剤などといった,効き目があるのかどうかわからないようなケミカル商品を売らされるのは良心が痛むという従業員もいることだろう。そうした商品を強引に売ろうとすれば,店頭サービスは荒んでくる。

 私の知人が,旅行先でフルサービスのGSで給油したところ,燃料代だけでなく水抜き剤2本の代金も請求された。“こんなもの買った覚えはない”と文句を言うと,従業員は“寒暖差が激しいこの時期は水抜き剤を入れなくちゃいけないんです”と,まるで買うのが当然といった返事。店長を呼び抗議して請求を取り下げさせたが,車の知識が乏しい客や気の弱い客には,そのような悪どい方法が通用していたのであろう。こういう目にあうから,客はフルサービスを怖がり,相対的にセルフサービスに支持が集まるのだ。

 また,ある元売系列の,油外収益をものすごく稼ぐ店に,他の支店傘下のGS関係者数人が見学に行ったところ,給油中の車を3~4人のスタッフが取り囲み,ボンネットを開けさせることに成功するや否や,ひとりがメニューボードを使ってセールスしているあいだに,エンジンオイルやトルコンオイルの交換をし始めるという有様だったという。“まるで集団レイプのようだった”と見学者のひとりは言っていた。

 もちろん,これらは一部の悪質な業者であって,大多数のGSは真面目にノルマ達成に取り組んでいるとは思うが,マネージャークラスともなれば,大なり小なり“自爆”して,月間成績の帳尻を合わせているではないだろうか。先日も,ある元売系列GSのマネージャーが,「入会後1ヶ月したら解約してくれれば良いから」と,親戚や知人にクレジット会員カードの申込みを頼んでまわっているという話を聞いた。ご苦労様デス。

 しかし,GS業界において最も悪質な“自爆営業”は,元売が100㌫販社に,ガソリン増販のために採算の取れない価格で販売させていることだろう。とにかく精製したガソリンを捌かないことには埒が明かないというわけで,日進市の元売販社はきょう現在,レギュラーガソリン142円,メール会員はさらに2円引きだ。自爆するのは勝手だが,それによって周辺のGSにも少なからぬ損害が及ぶのだから,これはもうりっぱな“自爆テロ”と言っていい。

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