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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.588『ラーメン店激戦時代』

社会・国際

2015-12-14

 『醤油豚骨ラーメンの草分けの「光麺」を運営する株式会社KMが東京地裁から破産開始決定を受けた。同社は1991年設立。95年,池袋駅前に第1号店を出して人気を博し,店舗数を増やしたが経営不振に。負債総額は9億8757万円に上るという。KM社は池袋西口店など3店舗を閉鎖し,他の6店舗はマリフィックという会社が引き継いで運営している』─12月12日付「日刊ゲンダイ」デジタル版。

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 いまや,ラーメン業界は一年間に1,000軒がオープンし,それと同じ数がつぶれるといわれる激戦なんだとか。ラーメン業界に詳しい料理評論家・小野員裕氏によれば,「ラーメン屋でもやってみようか」という軽い気持ちで開業する人が増えているのが原因だという。標準的なラーメン店は,内装工事をして新たに出店するとなると500~700万円かかるが,空き店舗に居抜きで入れば100万~200万円でオープンできるため,「ろくに修業せず,食べ歩きをしただけの人が思いつきで開店し,1ヶ月後に閉店するようなケースが増えている」(小野氏)というのだ。

 また,ラーメン店のチェーン化についても小野氏は次のように述べている。「本当のラーメン通はチェーン店ではなく,きちんと修業した店主の個人店に行きます。そうした店の店主は麺とスープの相性などを熟知しているので味は間違いない。その情報がネットで広がり,行列ができて店は長続きするのです。個人店の多くは裏通りにあり,3~5日の売り上げで家賃を払えるよう堅実な経営をしています。一方,表通りの店のオーナーは収入を増やそうと次々と出店し,人件費などの重圧で閉店に追い込まれてしまう。いまはチェーン店受難の時代なのです」。

 GS業界にも当てはまりそうなことがあるような無いような。まず,ラーメン業界と同様,GSも毎年1,000軒が姿を消しているが,その一方で「ガソリンスタンドでもやってみようか」と出店する酔狂な人はまずいない。数百万円で開業できるような代物ではないのだ。一方,ラーメン店と比べて楽なことは,GSで扱う商品には,“秘伝のスープ”や“こだわりの麺”のように,永年修業してその製法を習得しなければならないものはない,ということだ。

 ただし,“凄腕の整備士”とか“洗車の達人”とか“接客の神様”と呼ばれるようなプロフェッショナルがいる店は,別格といえるだろう。ラーメン店同様,たちまちネットによってその情報は広まり,集客・固定化へとつながって行く。ただ,そのような人材は,GS業界にはほとんど見出せないのが現状だ。例えば,NHK総合テレビで毎週月曜22時から放映される「プロフェッショナル・仕事の流儀」という番組では,様々な分野でつとに知られたプロたちが登場するが,いまだGS業界で働いている人物は登場しない。身近な業種にまで範疇を広げても,このあいだ,283回目にしてようやく福山市の小さな自動車整備工場を営む兄弟の整備士が紹介されたのみだ。

 そんなわけで,ラーメン業界がまだまだ激戦を繰り広げるだけの活力があるのとくらべて,GS業界は優秀な人材の流出も相まって,どんどん衰退しているという状況と言わざるを得ない。しかし,街からラーメン店がなくなっても人々は生活することができるが,ガソリンスタンドがなくなってしまったらそうはいかない。我々は,自動車大国にあってガソリンを安定的に販売することによって人々の暮らしを支えているのであって,そう簡単に店をたたむわけには行かないのだ。とりわけ,少子化と省エネ化によって需要が減少しているうえ,原油安によりデフレ化が加速している中で,大手チェーンは規模を拡大させることで何とか売上を伸ばし続けようとしているが,それは前述のラーメン店のチェーン化と同様,コストの重圧もますます大きくなって行くことを意味する。そんなチェーン店を横目に,我々“個人店”は,裏路地でひっそりとたたずむラーメン屋のように,ひたすらローコストに徹してのれんを守ってゆくのみだ。それにしても「あったかいんだからぁ~♪」(少し古いか) 灯油もラーメンを売れ行きがよろしくない…。

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