セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.149『ドキュメント・セルフスタンド』

GS業界・セルフシステム

2007-03-12

 NHK総合テレビで、毎週火曜日午後11時から放映されている「ドキュメント72時間」という番組をご存知だろうか。ある特定の場所に三日間カメラを据え、そこを訪れては去ってゆく人々を捉えながら、社会の断面を浮き出させるという、なかなか面白い番組なのだ。

 この番組で取り上げられた場所は、バスターミナル、サービスエリヤ、宝くじ売り場、バッティングセンター、マンガ喫茶、リサイクルショップなど実に様々。そこで繰り広げられる“日常のドラマ”は時に心温まり、時に切なく、哀れでもある。残念ながら今週の火曜日が最終回なのだという。

 私としては、この番組で、ぜひともガソリンスタンド、それもセルフスタンドを取り上げてほしかった。実際、監視カメラを通して、人間の様々な行動を観察できる。朝は通勤・通学の途中に立ち寄る人がほとんどだ。皆、さっさと給油して、さっさと発車してゆく。中には、F-1レースのピット・イン顔負けの速さで、給油してゆく客もいる。子どもを幼稚園や保育園へ送って行くママたちも、この時間の常連客だ。車の中で朝ごはんを食べている子もいるし、慌ててトイレに連れて行かれる子もいる。みなさん忙しそうですね。

 “高齢者はセルフを敬遠する”というどこかのコンサルタントの言葉をあざ笑うかのように、近所の老人たちが、軽トラックに乗ってやってくる。リヤカーにポリ容器を幾つも積んで灯油を買いに来るじいさんもいる。みなさん、自分で給油するのを楽しんでいるかのようだ。ばったり顔見知りと会い、「あれ、まあ、やっとかめ(久しぶり)だねぇ」「ちょっとこの間まで腰を痛めとったもんでよぉ」なんて、まったりした会話を聞けることもある。手前味噌ながら、私の店のプリペイドシステムは、お年寄りでもすぐに操作を覚えることができるバリア・フリー設計なのだ。

 午後3時を過ぎると、周辺の大学の学生たちが、原付バイクに乗ってやってくる。うちの店に忘れ物を置いてゆくのは、圧倒的にこの連中だ。燃料タンクのキャップ、学生証や財布、サングラスや手袋、中にはヘルメットを置き去りにしていった奴もいる。主たる原因は、給油しながらの携帯電話だ。大抵は、すぐに気がついて一両日のうちに取りに戻ってくる。「あぁ、よかった~、マジ助かった~」と大喜びする奴もいて、笑ってしまう。もう忘れるなよ。

 初めて来店し、給油の仕方がわからない客もいるが、大抵、隣で給油している客に教えてもらっている。ある時など、学生風の若者が、おばあさんにカードの買い方から、キャップの開け方、給油の仕方まで、ずっと付きっきりで教えていた。その親切な教え方といったら、下手なスタンドのスタッフなんぞ比べ物にならないくらいだった。おばあさんは、若者を引き止めると向かいのコンビニで缶コーヒーを買って、何度もお礼を言いながら手渡していた。セルフスタンドならではの、さわやかな出来事だった。

 夜も更けてくると、人間のいろいろな営みに出くわす。給油をしているうちに、何かの事で連れと口論になり、つかみ合いを始めた男がいたかと思えば、券売室へ連れ立って入ってくるや否や、抱き合い、チュウチュウやりだすカップルもいた。どこかのスタンドの従業員が、うちの店内でサービスコンテストの練習をしていたこともあった。どいつもこいつも、よそでやってくれ!

 「人はガソリンスタンドに行きたくて行くのではなく、仕方なく行くのだ」と言うのが自説だが、それでも、そこへやってくる客の様子を見つめていると、人々の暮らしぶりやものの考え方などをうかがい知ることができる。幸せな人も、悩んでいる人も、元気な人も、不機嫌な人も、皆、セルフスタンドでのつかの間のひと時を過ごし、また次の目的地へと出かけてゆくのである。どうぞお気をつけて、そして良い一日を…。

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