セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.148『おふくろさん』

エンタメ・スポーツ

2007-03-05

 森進一が、代表曲「おふくろさん」を歌えなくなってしまうかもしれないという騒動が、ワイドショーを賑わしている。何でも、この歌の作詞家・川内康範氏に無断で、イントロ前に、短い“語り”とメロディが付け足されたことに川内氏が抗議、話し合いの場が設けられたものの、直前になって森サイドがドタキャンしたことで川内氏は激怒、「もう俺の歌を森には歌わせない」ということになったらしい。

 森進一と言えば、押すに押されぬスター歌手である。そして、森進一と言えば、「おふくろさん」である。だれでも簡単にできる森進一の物まねも、やっぱり、あの表情と、あの声で♪おふくろさんよぉぉ、おふくろさぁぁん…とやるのがお約束である。つまり、「襟裳岬」や「冬のリビエラ」は、誰か別の人がカバーしても、それなりに聴くことができるが、「おふくろさん」だけは、森進一以外の人が歌うなんてことは考えられない、と私は思うのだ。吉幾三が「森が歌わないなら俺が…」と名乗りを上げているらしいが、とんでもないことだ!

 確かに、作詞家に無断で歌詞を変えたり、付け加えたりするのは良くないことだと思う。しかし、一方で、森進一以外の誰かが「おふくろさん」を歌っていたら、あの曲は、きょうまで多くの日本人に歌い継がれる曲となっただろうか。だれもが、「おふくろさん」は“森進一の曲”であると認識しているのではないだろうか。

 なぜ、こんなことをくどくどと書くかというと、ガソリンスタンド業界にあって、毎日来店する客はだれの客なのかという問題と関係があるように思うからだ。元売各社は“ブランド力”なるものがエンドユーザーからの信頼と支持を得ており、自社のマークやカードがあればこそ、集客も増販も叶うのだと、系列店主たちに説いてきた。その甲斐あって、多くのガソリンスタンド店主は、元売に対する不満一杯のくせに、「じゃあ、そんな元売から買わなければいいじゃないですか」と問うと、途端に意気地が無くなって、「いや、やっぱりマークがないと…」とか、「元売カードの客が2割ぐらいあるから…」と腰が引けてしまうのだ。つまり、自分の店に来る客は、元売のブランドあってこその客なのだと信じているのだ。従って、元売が首を縦に振らないような、独自のセルフシステムの導入などは、勝手に“歌詞”を変えるようなものであり、ご法度なのである。「よし、テクナシステムを導入しよう!」と明言したのも束の間、何日かして「実は元売の方からいろいろ言われて…」と断ってきたスタンド経営者は、少なくない。

 「あなたの店の客は、元売の客ではなく、あなたの客なのです。だから、このセルフシステムを導入するならマークを取っ払うと元売が言ってきても、恐れることはありません。よしんば、元売のマークが取り外され、元売のクレジットカードが使えなくなったとしても、大半の客はあなたの店を支持してくれますよ」─。私の言葉を信じて、テクナセルフシステムを導入した勇気ある店主たちは、いま、“歌詞”や“曲調”が少々変わっても、いままでのファンのほとんどは何ら変わることなく支持してくれるばかりか、新たなファンが日に日に増えていっていることに、安心感と満足感を感じている。

 元売が何と言おうと、あなたの店の客はあなたの客である。仮にあなたが、別のレコード会社に移籍したり、あなた自身で作詞作曲をしたとしても、あなたに実力さえあれば、あなたのファンはあなたから離れることは無いだろう。同様に、森進一に非があろうと無かろうと、「おふくろさん」はやっぱり森進一の曲である。事実、今回の騒動で、森進一の「おふくろさん」が聴けなくなるかもしれないと感じたのか、USENへの同曲へのリクエストが急増し、最新の集計では、騒動前の7倍にまで増えたとのこと。さもあらん。「あなたの、あなたの、し・ん・じ・つぅぅぅ…忘れはしない♪」─。

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