セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.157『機器選定』

GS業界・セルフシステム

2007-05-14

 天然ガス車向けの燃料スタンド「エコ・ステーション」の建設工事の入札をめぐり、名古屋に本社を置く大手都市ガス・東邦ガスの子会社であるガスプラント会社が、入札者の選定を任せるよう発注者のガソリンスタンド業者に働きかけるなどして他者の入札参入を事実上妨害したとして、今月11日、公正取引委員会は独占禁止法に基づき、警告・指導を行なった。

 天然ガスを貯蔵・供給する設備を建設できる業者は、そう何軒もないのだから、自然と供給元の関連子会社に発注ということになろう。ガス会社が働きかけなくても、スタンド業者のほうが、大方、「おたく(の業者)でやってちょ~」と依頼したことだろう。

 いずれにせよ、スタンドの敷地の端っこに、やる気無さそうに建てられている天然ガスの充填所をたまに見かけるが、大半は行政当局から頼まれて作ったものだと聞くし、建てるに当たっては、国や県から補助金がバーンと出ているそうだから、今回の問題は、当該スタンド業者にとっては、どうということはないのではなかろうか。

 セルフスタンドの建設に当たって、供給元の石油会社が、「あそこの業者を使ってくれ」とスタンド業者に圧力を掛けることは、表向きはない。どこの建設会社に建てさせようが、どこの計量機を使用しようが、それは施主であるスタンド業者の自由ということになっている。

 しかし、精算システムの選定に事が及ぶと、その限りでない。元売は、POSシステムにより、スタンド業者の油と金の出入りを監視しなければならない。そのうえ、自社のクレジットカードによる値引きやポイントサービスなどができるシステムを導入させなければならない。従って、プリペイドカードと現金による精算に特化したシステムや、元売のPOSを必要としない自社プログラムによる集計システムの導入を締め出そうとするのだ。

 もちろん、最終的には、金を出すスタンド業者が決定することであり、元売がその決定を覆すことはできない。とはいえ、元売が「推奨する」システムを導入するなら、もれなくアレもコレも付いてきますよ、ということになると、元売への依存度が高いスタンド業者は、「補助金」欲しさに、まず抵抗できない。それが、後々どれほどコスト高となって跳ね返ってくることになっても、従わざるを得ないのだ。

 元売のマークを掲げている以上、その元売の製品を売るのは当たり前だ。しかし、売り方まで同じでないといけないのだろうか。例えて言うなら、中日ドラゴンズのユニフォームを着ている選手は、だれもがドラゴンズの勝利のためにプレーしなければならないが、だれもが同じバッティング・フォームやピッチング・フォームでないといけないのか、ということになる。長距離打者もいればバントの名人もいる。本格派の先発投手もいれば、左のワンポイント・リリーバーもいる。皆がそれぞれのスタイルで貢献できるのではないか。

 全国津々浦々、我が社のマークを掲げるスタンドでは、皆同じサービスが受けられるなどというのは机上で考え出された幻想的政策であり無理なことであり、その“縛り”をいやがって、フリーエージェント宣言をするスタンド業者が増えている。

 しかし、自社の製品をたくさん買って、きちんと払ってくれさえすれば、あとはどうやって売ってもらおうがかまわない。その代わり、事後調整も補助金も一切出さずに自己責任で経営してもらう─そんな特約店政策を打ち出す元売が現われたなら、恐らく困るのは特約店の方だろう。エコ・ステーションにせよ、セルフスタンドにせよ、多くのスタンド業者は相変わらず“元売頼み”だからだ。設備やシステムにおける元売の隠然たる支配は今後も続くことだろう。

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