セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.249『ステロイド』

エンタメ・スポーツ

2009-03-16

 メジャー・リーグにそれほど詳しくない人でも、アレックス・ロドリゲス(A・ロッド)の名はご存知だろう。走攻守に傑出した才能を誇る、メジャー・リーグ最強の三塁手と言われている。ホームラン王5回。33歳の若さで通算553ホーマーを放っており、バリー・ボンズの持つ762ホーマーの最高記録を破るのは確実と見られている。2007年のシーズン終了後にニューヨーク・ヤンキースとの間で10年330億円(!)という契約を結んだ、メジャー屈指のスーパースターだ。

 そのA・ロッドが、2003年に行なわれた薬物検査において、筋肉増強剤であるステロイドの陽性反応が出ていたことが最近報じられた。当時の検査は、匿名と罰則なしが条件として行なわれたため、A・ロッドは当初ノーコメントを貫いていたが、後になって2001年から2003年までテキサス・レンジャーズに在籍していた期間にステロイドを使用した事を認め、謝罪した。ちなみにその3年間にA・ロッドは156ホーマーを放ち、すべての年でホームラン王に輝いた。

 今日、メジャー・リーガーのみならず、あらゆる種目のスポーツにおいて薬物汚染が広がっている。生来の身体機能をさらに高め、より強く、より速くなることが一流アスリートへの道を切り開き、それが冨と名声をもたらすからだ。あるスポーツ医学の専門家が、若いスポーツ選手たちに、「決して捕まることなく、この先5年間どの試合でも勝てるが、その後副作用で確実に死ぬ」という禁止薬物があったなら使用するかどうか尋ねたところ、半数以上が使用する、と答えたという。

 ガソリンスタンド業界にも、これまで元売会社から提供される様々な形の“仕切値引き”というステロイドを使用して、販売量を伸ばし、店舗網を拡大してきた代理店・特約店が少なからずある。近年では、あからさまな期末調整は少なくなっているが、増販インセンティブやカード獲得インセンティブ、新POS導入補助金、セルフ改造支援金などの名目で仕入れ価格を調整し、「より多く」ガソリンを売らせようとする元売の施策が続けられてきた。

 ところが、大半の元売が仕入れ価格を週単位で改定するようになったことで、そうした“クスリ”もあまり出せなくなってきているという。某元売の関係者は「来年度のうちのキックオフは荒れるんじゃないかな」と予測している。「もう、いままでみたいに売っちまった油の値段をあとで調整するなんてことはできなくなるんだから、いま仕入れている油の価格にちゃんとマージン乗っけて売ってくださいよってお願いしているんだけれどね」─。

 しかし、これまで元売の出すクスリにどっぷり浸ってきた代理店・特約店が、すぐに体質を変えられようはずもない。元売が利益保証(大抵は支店長の口約束なんだけれど)をしたので出店したり拡販したにもかかわらず、あとになってそんなことは知りませんと言われ、怒った代理店・特約店が元売に対して訴訟を起こすなんてことがこれからもありそうだ。だが、それでも非は“クスリ”に手を出した代理店・特約店にあると私は思う。事実、それをテコにして売上を倍々ゲームで伸ばし、会社を大きくするという欲求を満たしてきたのは、ほかならぬ彼らだからだ。問題は、これから先その副作用にどう対処してゆくかだ。

 ステロイドは短期間の使用でも、心臓発作を起こす危険や肝・腎不全、重い精神病になる危険がある薬物だ。これまで、仕切値引を頼りに高コスト体質のスタンド運営をしていた会社は、一日も速くコスト削減に着手して負担を軽くし、会社の循環器(資金繰り)を正常にしなければならない。ローコスト・セルフシステムへの転換は、その有効な手段の一つであると言える。

 ところで、今回のWBCで、A・ロッドは母国ドミニカ共和国の代表として出場する予定だったが、直前に股関節の故障で不参加となり、優勝候補最右翼だったドミニカは、なんとオランダに二度も敗退して予選落ちとなってしまった。ばちが当たったか!?

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