セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.257『値札』

GS業界・セルフシステム

2009-05-18

 近所のスーパーマーケットは閉店間際になると、刺身や惣菜が見切り品として昼間の半値程度で売られるので、時々妻と共に夜食などを買いに行くことがある。何度か行くうちに、その時間帯の“常連客”が数人いることに気がつく。その中でもひときわ目立つ裕福そうな身なりをした老婦人がいた。

 最近、そのスーパーでパートタイマーで働いている知り合いの女の子に、「おたくの店に、閉店間際に来る客の中に、これこれこんな感じのバアサンがいるでしょ?」と話を向けたら、「ああ、あの人うちの店に来る客の中でサイテーの客なんですよ」と怒りをあらわにした。

 彼女の話によれば、その老婦人は値引された値札を引っぺがすと、値引されていない商品に貼ってレジに持って来るのだという。学生のアルバイトは、ロクにPOSの表示も確認せずにバーコードリーダーを通しているためすり抜けていたようなのだが、おかしいと気づいた彼女が突き止めて発覚した。老婦人は自分が貼りかえたことを認めず、店側の落ち度だと主張して逆切れする有様。その後も性懲りもなく閉店間際に出没しては、値札を貼りかえる機会をうかがっているらしい。

 値札にかかわる悪質行為といえば、我々の業界にもこんな話がある。価格看板に「レギュラー95円」を掲出していたあるスタンドが、ある朝、客から価格が違うと叱られた。そんなはずはない、レシートにはちゃんと95円の単価表示が…と思い、価格看板を見上げたら、なんと「59円」になっているではないか。誰かが、昨夜のうちに数字を入れ替えたらしい。看板をかけ替える間もなく次々に客が来店し、その店は半日近く59円のガソリンを売る破目になったとか。後日、その店は電光掲示看板を取り付けることにしたそうだ。

 それにしても、多くの小売業はセルフ化に伴ない、値札の貼りかえや万引きなどの犯罪行為に日々神経をとがらせなければならないのと比べ、ガソリンスタンドはそうした心配をほとんどせずに済む。また、商品の賞味切れや型落ちなどで見切り売りをする必要もない。ずいぶんと楽な商売ではないか。

 にもかかわらず、我が業界では在庫が腐るわけでもないのに、見切り品並の価格で売るのが恒常化している。しかも、昨今は仕入れ値が上がっているのに、値下げするという有様だ。しかも、「112円」の表示を見て来店した客に、頼まれもしないのに「会員価格3円引き、本日さらに2円引き」で売る始末。客が値札を貼りかえずとも、店側がせっせと貼りかえてくれるというわけだ。

 こういう馬鹿のお陰で、私の店はとても迷惑している。ある客が給油後に、「おい、価格が違うぞ」と言うので確かめると、表示価格どおりにちゃんと給油されている。間違いありませんと答えると、「この辺りのスタンドは、みんな表示価格から5円引いて売っているじゃないか」と客。当店は表示どおりの価格で販売しておりますと答えながら、何でそんな当たり前の事を説明しなきゃならんのだと腹が立った。

 一方、クレジットメンバーに入会したうえ、メール会員に登録してはじめて購入できる単価を、沿道の一番目立つ場所に表示しているスタンドもある。大抵の客は現金で給油し、レシートを見たら看板価格よりも5円も高い単価になっているので腹を立てる。これは当然だ。詐欺だと言われても仕方がないとも思う。同じことを、スーパーでやってみるがいい。100円の値札が付いた大根をレジへ持っていったら「クレジット会員でない方は150円」ですと言われて、ああそうですかとすんなり納得してくれる客がどれだけいるだろう。件の老婦人でなくても値札を貼りかえろと怒り出すに違いない。

 我々は小売業者の一員である。しかし、きちんと“値札”を貼ることすらできないようでは、小売業失格である。それができないうちは「採販確立」など永久に無理だと思う。

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