セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.343『体験学習にいらっしゃい』

GS業界・セルフシステム

2011-01-31

 このあいだ,無性に「モスバーガー」が食いたくなって,家内と共に車で10分ほどのところにある(途中,マクドナルドの店舗を3軒も通り過ぎた)モスの店舗へ食べに行った。店の入り口に置かれたイーゼルに,「中学生の職場体験学習が行なわれております云々」という告知がなされていた。店内では,ユニフォームを着た二人の坊やが,もたもたしつつもスタッフの指示を受けながら商品を運ぶなどの軽作業をしていた。

 ガソリンスタンドでも,こうした光景をよく見かける。もっぱら地場のフルサービスのGSで,中学生が2~3人程度“雇われて”いるが,作業内容はといえば,給油や窓拭き,タイヤの空気圧チェックなどが多い。私だったら,少年少女のつぶらな瞳の「目ヂカラ」をフル活用して,ワックス洗車あたりをガンガン勧めさせるのだが…。

 実は,私の店も以前,地元の中学校から職場体験学習に協力してほしい旨の打診を受け,諾了したことがある。具体的な作業内容を書面で提出してほしいとのことだったので,監視業務,現金管理,店内清掃など,およそセルフスタンドで通常行なわれているほとんどの業務を盛り込んだ。無論,保安監督者であるスタッフのもとでの作業だが,学校側からは「今回は見送らせていただきます」とのことだった。

 私としては,ローコストセルフであれば,中学生でも十分運営ができるということを実証したかったのだが,学校側は荷が重いと判断したのかもしれない。あるいは,希望者がゼロだったのか。業界紙にも,GSで体験学習をした中学生たちのことが時々報じられるが,「お客さんの車一台一台を大切にしなければいけないことがわかった」なんて殊勝な感想を目にするたびに,私は「ホントにそう思ったのかなぁ」と勘ぐったりする。

 中学生にもなれば,フルサービスとセルフサービスの違いはわかるはずだ。給油をしたり,窓を拭いたりすることが,本当に必要な仕事だと感じているだろうか。『店長さん,どうしてこのスタンドはセルフにしないんですか?』なんて聞かれた時には,何と答えるのか。『ガソリンは額に汗して売るものなんだよ』なんて答えで,彼らが納得するだろうか。

 お金を稼ぐということは大変なことなんだ,ということを中学生に教えたいという意図は理解できるが,ガソリンスタンドでの職場体験に限って言えば,「何でこんなことしなくちゃいけないんだろう。ヘンな仕事だなぁ」と思われてしまうのではないだろうか。将来社会人になる子供たちに,いまのうちから,価格競争の厳しさ,コスト削減の必要性,テクノロジーの効果性について教えておくのは悪いことではないはずだ。

 「クロネコヤマト」の生みの親,故・小倉昌男氏は,宅急便の許認可権をめぐる運輸省との戦いを振り返って,こう述懐している。「小学5年生になると,社会見学があって,うちの配送センターなんかにも見学にやってくる。そこで,子供たちに宅急便の仕組みを説明するとちゃんと理解してくれる。運輸省の役人は小学5年生以下だ」─。

 同じように,恐らく,先入観や既成概念に縛られている業界人たちよりも,中学生のほうがローコストセルフ・システムの必要性をよくわかってくれるのではないだろうか。是非,うちの店に体験学習に来ていただきたいものだ。

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