セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.99『カッコウの巣の上で』

GS業界・セルフシステム

2006-03-13

 原油高による売上げ高騰と寒波による灯油需要の急増によって、元売各社の決算は軒並み大幅な経常増益となる模様だ。莫大な利益を得て、元売は今後さらなるハイペースで直営セルフ店舗を展開してゆく事が予想される。

 とはいえ、新規出店はリスクが伴なう。最近、東海地方で外資系元売が建設した大型セルフスタンドは、建設・設備費だけで1億8千万円(!)を投じたものの、現時点で月販150~200㌔程度だという。なぜそんなことになってしまったのか知る由もないが、このまま行けば半永久的に赤字を垂れ流すことになるだろう。計画責任者は切腹ものですな。

 すでに各元売とも、自社が所有している目ぼしいスタンドのセルフ化は一通り済ませており、新規出店も成功率を見極めるのが難しいとなれば、最も確実なネットワーク強化策は、系列店所有のスタンドの中から、元売のメガネに適った立地条件や敷地面積のものを選んでセルフ化させることだろう。元売担当者が、「お宅の○○町SSは当社の重要拠点の一つに選ばれています」と切り出し、「どうです、思いきってセルフ化しませんか?(グラフなどを見せながら)当社のシステム、ノウハウを活用すれば現状の2倍、3倍の増販が見込めますよ。向こう何年間かは、その増販分に対しこれこれのインセンティブを出して資金面でも援助しますよ」といった具合に条件を提示してくるのである。

 もちろん、その際は、和田某が提案するようなプリカ・現金給油に特化したローコスト・セルフなどは決して認められず、元売指定POSおよび元売クレジットカードの導入が義務付けられる。「別に元売のマークを掲げ、元売の商品をたくさん売りさえすれば、どんなシステムを導入しようと勝手ではないか」との反論には、「それではインセンティブは出せません」─。

 元売が、そうまでして自社システム、とりわけ自社クレカシステムを義務付けるのは、それによって、いまは「特約店のお客様」であるそれらクレカユーザーを、ゆくゆくは直接、「元売のお客様」にするための布石を打っているからではないだろうか。

 系列店が、元売の勧めに応じてセルフ化したものの、増販のための値引きによってインセンティブは消えてしまい、改造前よりも重たくなったオペレーションコストに音を上げた時、再び元売担当者がやってきてこう言うのだ。「では、お宅のSSを当社が買い取りましょう。運営は当社子会社にお任せください。お客様は引き続き当社のカードで給油していただけるので何のご迷惑もおかけしません。何といっても、○○町SSは当社の重要拠点の一つですからね」─。

 松尾芭蕉の句に、「憂きわれをさびしがらせよ閑古鳥」というものがある。この「閑古鳥」というのはカッコウのことだが、古来、日本人はカッコウの鳴き声に物寂しさを感じていたようである。しかし、このカッコウという鳥、そんな奥ゆかしさとは正反対のえげつない鳥なのだ。カッコウには「托卵たくらん」という習性があり、産卵する時、モズやホオジロといった異なる種の鳥の巣から卵を一個抜き取り、代わりに 自分の卵を1個産み付ける。カッコウのヒナは短期間(10~12日程度)でふ化し、巣の持ち主のヒナより早く生まれて、巣の持ち主の卵を巣の外に放り出してしまい、自分だけを育てさせるのだ。

 「お宅のSSは重要SS」などという甘言に乗り、虎の子の自社スタンドを言われるがままにセルフ化したものの、気が付いたら元売の巣作りをしていたということのないようくれぐれもご用心を。元売は、次はあなたのスタンドを我が物にしようと「たくらん(托卵)でいる」かもしれない。

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