セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.997『コンビニ依存社会』

社会・国際

2024-04-22

 『セブン—イレブン・ジャパンは5月から,消費期限が迫ったおにぎりや弁当などの値引きを本部が推奨する形で行う方針だ。値引きをするかどうかはこれまで各加盟店の判断に任せていたが,実施は一部に限られていた。システムを活用して効率的に値引きを行い,食品ロスの削減につなげる狙いがある』─4月19日付「讀賣新聞」。

 公正取引委員会が,2019~20年にかけて全国の大手コンビニ約5万7千店を対象におこなった調査によると,大手コンビニが食品を1店舗あたり年間468万円(中央値)廃棄しているとのこと。一方,国税庁によれば民間の給与所得者の平均年収は443万円。コンビニ1店舗は1年間に,多くの国民の年収を上回る額の食品を捨てていることになる。日本人は「食べ物を粗末にするとばちが当たる」と教えられてきたはずなのに。しかも食料自給率がカロリーベースで38㌫,生産額ベースでも63㌫と,先進国の中で最低水準の国で暮らしているというのに。

 私たちは生き物の命をもらって食べている。家畜を育てるにも,稲や野菜を栽培するにも,多くの人手がかかっている。それを調理し,売り場に運ぶのにも,多くの人手とエネルギーが使われている。食品ロスを出すとは,生き物の命を無駄にするだけでなく,大勢の人の苦労と貴重な資源やエネルギーも無駄にし,ごみ処理場で生ごみを焼却処分するのに膨大なコストを使い,気候変動に悪影響を与える温室効果ガスを出すことにもなる。


 利便性を売りにするコンビニは定価販売が基本で,これまでは販売機会を失わないよう多めに発注し,余ったら店頭から撤去,つまり廃棄するのが鉄則だったが,『(売れ残った)恵方巻で鬼撃退できそう』『(大量の)年越し蕎麦が店で年越してる』など,コンビニスタッフがSNSで次々に“内部告発”するに及んで,世間から「もったいない!」と指弾され,ようやく重い腰を上げることになったというわけ。これまでも,良心の痛みに耐えかねたコンビニ店主たちが,賞味期限が迫った弁当を独断で値引き販売してきたが,損失は全額店側の負担。そのうえ規約違反として本部からペナルティも課せられていたというのだから酷い話だ。


 ところで,セブン—イレブンの方針転換は,「食品ロスを減らす」というのは表向きで,実はこのところの物価高で,コンビニ弁当や惣菜・スイーツなどが売れなくなってきたことへの対応策なのではともいわれている。いよいよコンビニも価格競争の世界に足を踏み入れざるを得なくなってきたということか。約300品目にのぼる商品の値引き額については,加盟店に委ねられているとのことなので,夜になったら店の外まで列ができる「激安コンビニ」が現れるかも。


 一方,石油製品はといえば,これはもうロスを減らすどころか,消費量そのものを限りなくゼロに近づけるよう求められている。例えばプラスチック。コンビニの店内を見回してみて,プラスチックが使われていない商品を見つけるのは難しい。プラスチックに使われる石油の約半分は原料として,残りの約半分は製造工程の燃料として使われるが,今後プラスチックの消費量が増え続ければ,2050年にはプラスチック産業が,世界の石油消費量の20㌫を占めると予測されている(2020年時点では7㌫)。

 製造過程だけでなく,廃棄したあとも厄介だ。世界全体で毎年1,100万トンに上るプラごみが海に行きついていると推計されており,そのうちの9割近くが1㍉以下のマイクロプラスチックとなる。それらが生物や人体に及ぼす影響は明らかになっていないが,このままプラスチック製品を作り続ければ,間違いなく人類に悪影響をもたらす。回収されたプラごみも,再生プラスチックとして新製品に使われるのは25㌫程度だそうで,あとは焼却されるのだが,1㌧のプラスチックを焼却するごとに排出される温室効果ガスは,平均で2.7㌧。結局,プラスチックを使わない世界に戻らない限り,地球温暖化も環境破壊も止められないというのが「不都合な真実」なのだ。


 話が少々脱線してしまったが,食品ロスの問題にせよ,プラごみの問題にせよ,やはりコンビニという業態の成長とともに深刻の度合いを増していったように思える。コンビニはわたしたちの生活に欠かせない存在ではあるが,未来に禍根を残さないためにも,いまのようにコンビニに依存し続ける社会は,そろそろ修正してゆかないなければいけないと思う。

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