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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.996『大統領のジョーク』

社会・国際

2024-04-15

『岸田首相は10日夜(日本時間11日午前),ホワイトハウスで開かれたバイデン大統領夫妻主催の公式夕食会で,ジョークを織り交ぜた英語のスピーチを披露し,会場を沸かせた。裕子夫人と出席した首相は夕食会の冒頭,大勢の招待客を前に「妻が『誰が主賓なのか見分けるのが難しい』と言っていた。大統領の隣の席に案内された時はほっとした」と語ると.場内は大きな笑い声に包まれた』─4月11日付「時事通信」。

 国内では支持率が6ヶ月連続で過去最低を更新中と“逆風”にさらされている岸田首相だが,国賓として招かれた米国では歓待され,『日本の国会では,これほど素敵な拍手を受けることはまずありません』との自虐ネタも大いに受けて,“舌好調”だったようだ。

 岸田首相はさておき,政治家の人気は往々にして機知に富んだジョークやユーモアセンスによって図られることがある。とりわけ,米国では大統領に求められる必須条件ともいわれている。その点で,歴代中,最も高い評価を受けているのはジョン・F・ケネディ(第35代)だ。ケネディはハプニングが生じた時にとっさに発するジョークがきわだっていたといわれる。例えば,ケネディ夫妻がメキシコを訪問した時のこと,晩餐会でケネディはメキシコ大統領がはめている時計を褒めた。メキシコ大統領は,それをはずして彼に進呈しようとした。ケネディは遠慮するが,相手は引き下がらない。「何かを誉められたら,それを誉めてくれた相手に差し上げるのが,メキシコの習慣なのです」。するとケネディは傍らにいたジャクリーン夫人に,『君を誉められたら困るな』─。

 ケネディのセンスが光る私のお気に入りのジョークをもう一つ。1961年,米国初の宇宙飛行士A・シェパードの帰還を祝福する式典で,ケネディはシェパードに渡すメダルを落としてしまう。周囲が凍り付いた瞬間,ケネディは落ち着いてメダルを拾うと,こう言って手渡した。『地上から空の英雄にメダルを授与しよう』。ナイス!もしかしたら,このジョークが言いたくてわざと落としたんじゃないかとさえ思える。

 そんな時でもジョーク飛ばすの? という大統領もいた。現在まで,銃弾を浴びて生き残った唯一の大統領であるロナルド・レーガン(第40代)。1981年,ワシントンのホテル前で左胸を撃たれたが,弾丸摘出手術のときに妻ナンシーにこう言ったという。『身をかがめるのを忘れちゃったよ』。さらに,手術直前,酸素マスクを外すと『みんな共和党員だといいんだが』と言って,執刀医や看護師らを笑わせた。民主党員だった執刀医の返事もふるっている。『きょうは全員,共和党員です』─。

 俳優出身の大統領だけあって,ジョークはお手のものだったのだろう。それにしても,死の危険にさらされてもなおユーモアを忘れないのは大したもの。イラン・コントラ事件などのスキャンダルにまみれながらも“憎めない大統領”として党派を超えた人気を博した理由はこんなところにあったのかも。大統領ではないが,同じく俳優でカリフォルニア州知事選に出馬したA・シュワルツェネッガーは,演説中に聴衆から卵を投げつけられたが,顔色一つ変えずに卵をぬぐうと『ベーコンも一緒に寄こせよ』。やんやの喝采で,シュワちゃんは見事知事に当選した。

 一方,ドン引きされるような醜悪なジョークも。ジョージ・W・ブッシュ(第43代)は,2011年の記者晩餐会で,自身が大統領執務室の机の下などをのぞき込み,「大量破壊兵器がないなあ」とぼやくビデオを流した。イラク戦争の“大義”だったはずの大量破壊兵器が見つからないことへの自虐ネタでウケを狙ったつもりだったが,その“大義”のために命を落とした米国民をだしにすることとなり,大ひんしゅくを買ってしまった。

 さて,岸田首相のみならず,世界中の指導者がいま最も気にかけているのは「もしトラ」問題ではないだろうか。当のD・トランプ前大統領(第45代)は意気軒高。『ある大国の大統領が「もし(防衛費を)払わないでロシアに攻撃されたら,守ってくれますか?」と聞いてきた。私は「いや,守らない。それどころか,ロシアにやりたい放題するよう促すだろう。だから払わなければダメだ」と言った。そうしたら金が流れ込んできた』。(2月10日,サウスカロライナ州の集会における発言) これってジョークですか?

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