和田 信治
政治・経済
2010-01-18
政府は来年度から、ガソリン税のうち暫定税率(25.1円/ℓ)を廃止し、代わりに暫定税率と同額の「特例税率」を創設して現在と同じ課税水準を維持するという新たなガソリン課税案を、今国会に提出する意向だという。
「特例税率」の“特例”とは何かというと、ガソリン価格が一定の水準を超えて値上がりすればこの税率が停止され、値下がりするとまた復活させるというものらしい。政府案によると、2008年度上半期の平均価格である167円あたりを「発動価格」、「解除価格」は現行水準の126円ぐらいを考えているとのことだが、これには民主党内に「発動価格」をもっと下げるべきだとの意見もありまだ流動的だ。判定基準となるガソリン価格は、総務省が毎月発表している小売物価統計を用いるとのことで、価格を見きわめる期間は 3ヶ月から半年程度としている。
例えば、「発動価格」が160円に設定された、それを上回る価格が法律で定める期間続いた場合、特例税率の執行が停止され145円に値下がりする。「解除価格」が120円に設定されていれば、今度は145円に値上がりするというわけ。一昨年のように、ガソリン価格が160円を越えるようなことは、この先そう滅多にあることではないから、やはり事実上の税率延長ということになりそうだ。
だが、もしこの制度が導入されたらおもしろうことが起きるのではないかと予測したりもする。仮に「発動価格」の水準まであと10円というところまで上がってきたら、全国のGSが突如団結して「ここまで来たら10円値上げしようぜ!」ということにならないだろうか。仮に判定期間が3ヶ月ということであれば、「特例税率停止が発動されるまで3ヶ月間この市況を維持しよう」ということになるだろう。日ごろは、他店より1円でも安く売ろうと抜け駆け合いを繰り広げているGS業者が“発動価格越え”を目指して歩調を合わせるという、感動的(?)な光景が見られるかもしれない。
また、その後下げ局面となり、「解除価格」が近づいてきたら、またしても全国のGSが団結し、「もうこれ以上値下げするのはやめよう」ということになるかもしれない。
『○○県では安売り競争が過熱しているらしい。このまま放っておくと、全国の平均価格が○○県のせいで「解除価格」を割り込んでしまうかもしれない』
『それはイカン! 全国の組合員を総動員して○○県へ乗り込み、価格競争をやめるよう説得しよう!署名運動もやろう!』
『□□石油系列の販売子会社が自社会員に対して10円引きで販売しているそうだ』
『なんだとぉ!不当廉売で訴えよう!□□石油の本社前で抗議集会を開こう!』
…とまあこんな具合で、これまで石商がどれだけ訴えても足並みが揃わなかった市況が、特例税率が復活しない範囲内で安定するという、夢のような出来事が生じるかもしれない。客もガソリンが25円下がるならということで、160円台のガソリン価格が数ヶ月続くのを辛抱してくれるだろうし、逆にまた25円上がるぐらいならこれ以上下がらない方が良いと感じてくれるんじゃないだろうか。
今回の特例税率方式を、現場が混乱すると懸念する向きもあるが、それはGS経営者がこれまで通りに自己中心的な行動をとればの話だ。我々がちぃとばかし賢くなって団結すれば、GS経営者の力で、特例税率復活を阻止することが可能になるというわけ。しかも、仕入れが下がっても「解除価格」を下まわらない程度に値下げ幅を抑制すれば、ガソリンマージンが劇的に回復するかもしれない。みなさん、何だかワクワクしませんか!?
コラム一覧へ戻る