セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.210『原付バイク』

GS業界・セルフシステム

2008-06-02

 少し前の話だが、私の店に高級外車に乗った中年の男性が来店した。車を降り、プリカ販売室へ入ると、券売機の前でしばらく考え込んでいる。モニターでその様子を見ていた私は「きっと、1万円プリカを買おうか、価格がさらに1円/㍑安くなる2万円プリカを買おうか迷っているのだろう」と推測していた。すると、その男性は「やっぱり1枚でいいか」とつぶやくと、千円プリカを1枚買って、給油していった。どうやら彼は、千円プリカを1枚買うか2枚買うかを迷っていたようなのだ。

 別の日に、今度は原付バイクに乗った女の子が店に滑り込んできた。てっきり“ワンコイン(五百円)給油”かと思いきや、彼女は軽やかな足取りで券売機に向かい、迷うことなく1万円プリカを買っていった。高級外車に乗っているから高額プリカ、原付バイクに乗っているから小額給油というのは、こちらの勝手な思い込みに過ぎないということを教えられた出来事であった。

 私の店がある愛知県・日進市は、幾つもの大学が点在する「学園都市」である。したがって、原付バイクに乗った学生の客が非常に多い。前述の女の子のようなケースはまれで、ほとんどの学生は千円プリカを買うか、現金給油をしてゆく。その際に生じる一つの問題は、計量法が定める「最少測定量」の規定である。計量法・第三百七十九条によれば、自動車等給油メーターの最少測定量は1㍑と定められている。どういう事かというと、1㍑150円のレギュラーガソリンを100円分だけ給油したいという客がいても、それは1㍑未満の数量指定となるため、POS操作によって給油することはできないのである。

 これをプリカ方式の給油に適用すると、1㍑相当額を上まわる金額のプリカを使って1㍑未満のガソリンを給油することはできるが、残り金額が1㍑相当額を下まわるプリカは使用できないということになる。そのため、残金が1㍑相当額を下まわるプリカについては、その残金分を現金で返金しなければならない。これまで、プリカ方式を採用していたセルフスタンドは、この面倒な作業に手を焼いていたが、私が推奨するテクナシステムでは、この煩雑な対応もオートマチックで処理することができるよう改良されている。

 本来、テクナシステムは、プリカによる代金決済方式を主とする精算システムだが、小額給油に対応するため、現金機能も補助機能として搭載されている。前述の計量法の規定に沿うべく、現金の最低投入額は300円からに設定されているのだが、当時は200円からでも良いのではと思っていた。しかし、昨今のガソリン価格の高騰を見ると、近い将来、まずハイオクガソリンの単価が200円を突破してもおかしくない状況である。最低金額300円に設定したのは、決して大げさではなかったようだ。

 原付バイク客のもう一つの問題は、彼らがプリカで給油をすると、千円プリカであっても一回で使い切ることがないため、途中でパンチ穴が開き、最終的に回収してもリユースが効かないことだ。では、原付バイクの客には、現金給油をお勧めした方が良いのかといえばそうでもない。千円であれ、一万円であれ、プリカを購入すれば、それは確実に再来店客として固定化されることになるからだ。それに、プリカでの給油は、現金で給油するより短時間で済む。混雑時には、原付バイクにはさっさと給油して出て行ってもらいたいので(すみません)、これは痛しかゆしの問題である。

 セルフスタンドで給油する原付バイクの客は、前かがみになりながら、給油口に神経を集中させて(?)チョロチョロとガソリンを注いでいる。最後の一滴までしっかりと。その姿からは、高騰を続けるガソリンが、まさに“血の一滴”にも等しいものであり、あだおろそかにはできないという消費者の姿勢がにじみ出ている、とは少々大げさか。

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