セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.105『功名が辻』

エンタメ・スポーツ

2006-04-24

 NHK大河ドラマの「功名が辻」。戦国の世を生き抜き、土佐24万石の領主となった山内一豊と、彼を支え続けた賢妻・千代の物語である。しかし、そもそも山内一豊なんて、本来脇役級の人物の、そのまた妻が主人公というのでは、ドラマとしてあまり盛り上がりそうに思えない。そのうえ、このドラマのテーマが「内助の功」というのも、「何だかな~」という気がする。女性の社会進出がどんどん進み、職場でも家庭でも“男女共同参画”が常識となりつつある今日、我が身を殺して夫の手柄のために尽くす“やまとなでしこ”のお話なんて、相当時代とずれている感じがする。おまけに、亭主にかしずく千代を演じるのが、「てめぇら、よ~く覚えとけ。アタシがキッチリ卒業させてやるからな!」のあの“ヤンクミ”仲間由紀恵だから、余計に違和感を覚えるのは私だけだろうか。

 それはともかく、日本のガソリンスタンドの多くは、経営者とその妻、その息子や娘たちで運営されている、いわゆる「三ちゃんスタンド」である。中でも、経営者の公私に渡るパートナーである「おかみさん」の存在は、ある意味で「おとうちゃん」よりも大きい。フィールドに出て給油作業をするだけでなく、顔なじみの客に気さくに声をかけ、油外商品を勧めたりしたかと思えば、今度はセールスルーム奥の事務室で売上げの計算やら支払いの手配やらをしたりと忙しい。銀行や元売にとって一番手強い交渉相手であったりもする。

 それだけではない。ご亭主が、特約店会や組合活動といったあまり生産性のないお仕事をしている間に、奥様たちはもう一つの重要な仕事─家事と育児をこなしている。ある民間のシンクタンクの調査によれば、日本の一般的な主婦がこなす家事と育児を月給換算すると27万円ほどになるという。家庭の主婦は、その辺のスタンドの店長よりもよほど価値ある働きを、無給でしてくれている事になる。

 さて、そうした奥様たちのセルフスタンドに対する反応はどうかといえば、総じてご亭主よりも理解度が早く、明快である。とりわけ、ローコスト・オペレーションに対する感覚が、男性よりも鋭い。恐らく、家計をやりくりし、家事を切り盛りする中で自然に培われてきたのではないだろうか。実利を冷静に追求し、無駄な出費は抑えるという「主婦感覚」が、セルフスタンド経営にマッチしているように思える。

 愛知県のある三ちゃんスタンドは、それまで掛売り主体の経営で、価格看板など出したことのない「おとなしい」店だったのだが、数年前、突如マークを替え、セルフスタンドに改造し、地域最安値看板を出すという大変身を遂げた。以前からその店の温厚で保守的な経営者を知っていた私は、てっきり運営店が変わったのだろうと思っていたのだが、さにあらず。聞いたところでは、その店の跡継ぎ息子の嫁が主導権を執って大改革を断行したのだそうだ。ここまでくるとジャンヌ・ダルクだ。

 ガソリンスタンド業界は戦国時代のさなかにあるが、現代の「お方様」は、大河ドラマの世界とは異なり、自ら刀や槍を手に第一線で闘っている。中には、戦略を練り、自ら指揮する方もおられる。そんな頼もしい奥方がいれば、いっそ亭主は、家事や育児に専念し、バックアップにまわった方が良いかもしれない。セルフ時代における“功名のかぎ”は、家庭を“経営”してきた奥様たちの経験を生かすことかもしれない。

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