セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.136『お客様の声とは』

GS業界・セルフシステム

2006-12-04

  「お客様の声に耳を傾ける」とは、よく言われることだが、どうやってそれを行なうことができるのだろうか。ガソリンスタンドでは、毎日客と対峙しているのはスタッフであり、彼らが客からの要望や苦情などを速く、正確に経営者に伝えることができれば、そして、その声に経営者が的確な指示を出して応えることができれば、これはもう、何も心配することはない。しかし、実際にはそんなにうまく行くわけではない。

 まず、客からの声をスタッフがいつも正確に伝えてくれるだろうか。客から、「接客態度が悪い」とか、「店が汚い」などと言われて、それを正直に報告するとは限らない。また、「価格が高い」だの、「洗車をただにしてくれ」といった“要望”にすぐさま応えることができるはずもない。

  「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」とは、ご存知「踊る大捜査線」の青島俊作のセリフだが、スタンド経営者も元売の会議や石商の寄合、果ては懇親旅行やゴルプコンペなどにうつつを抜かしていると、現場で起きていることが分からなくなってしまう。また、元売主催の研修会で、茶坊主のようなコンサルタントの“客は快適さを求めている”とか“客の心の声を聞け”などという訳の分からない教えに洗脳されてしまうと、もはや“現場で起きている”ことは理解不能になってしまうかもしれない。

 ある、スタンド経営者は、社長という身分を隠し、「お客様係」という名札を付け、自分の店をまわっては、客に近づき、ナマの声を聞こうとしている。また、24時間営業のスタンド経営者は、数日間スタンドで寝泊りし、スタッフと寝食を共にしながら現場をつぶさに観察するという。大変ですな。

 元売も、スタンド経営者に客の声を届けようと種々のリサーチを行っているのだが、こんな笑い話もある。以前、某外資系元売が、地元の大学生などを使って、支店管内の系列店の覆面サービスチェックを実施したことがある。最下位となったスタンドは、当時としてはまだ珍しいノン・サービス店で、窓拭き、灰皿清掃、カードの有無の確認、送り出し誘導などの基本サービスは一切なく、最終評価は「もう二度と行きたくない」であった。ところが、このスタンドは、当時支店管内で平均販売量の何倍もを売る、ダントツの量販店であったのだ。

 「元売さんの調査で、“もう二度と行きたくない”と判定されているうちの店が、なんで一番たくさんガソリンを売ることができるのかね~」とその店の社長さんは笑っておられたが、結局、ローコスト経営に徹し、枝葉のサービスは切り捨ててでも「安売り」に徹することが、最も客からの声に応えていることになるいうことなのだ。当時、同じ系列に属していた私に衝撃を与えた“真理”であり、私のローコストセルフ理論の原点でもある。

 ところで、私の店では、スタッフのほうから客に近づくことは慎むようにしている。うっかり近づくと、「最近ガソリン高いわね~」と文句を言われたり、「ゴミを捨てさせろ」「車を洗わせろ」と要求されるのがオチだからである。しかし、時には有難い言葉をいただく時もある。たまたまフィールドをほうきを持ってうろついていたら、男性客が近づいてきて、「いや~、いつもこの店のガソリンは安いので助かっているよ。一度お礼を言おうと思ってね~。本当にありがとう!」─。

 “うちよりもっと安く売っている店たくさん知っていますよ”とも思ったが、わざわざお礼を言ってくださるとは恐縮である。また、ある女性客に、“初めてなので給油の仕方を教えて”とインターホンで呼び出されたスタッフのYは、その女性から、「わたし、このスタンドがオープンした時から、一度行ってみようと思ってたんだけれど、自分で給油する自信がなくて、いつも素通りしていたのよ。でも、勇気を出して(!)やっときょう、来ることができたわ。親切に教えてくださってありがとう」と言われてしまった。「オープンした時から」という言葉が正しければ、実に7年越しの願いを成就させたことになる。こちらこそありがとうございました。

 私の店のように、客との接触を拒んでいるようなセルスタンドであっても、こうして客の声は聞こえてくる。肝心なことは、それらの声に一喜一憂することなく、客が求める最大公約数を見きわめ、実行することではないだろうか。それはすなわち…。

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