セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.156『モッタイナイ』

社会・国際

2007-05-07

 2004年のノーベル平和賞受賞者(2004年)で、ケニアの環境保護活動家 ワンガリ・マータイ女史が、4月25日から5月2日まで日本に滞在し、出版記念講演や植林活動など様々な環境啓蒙キャンペーンを行なった。マータイ女史が、近年のノーベル平和賞受賞者の中でも際立って日本人に親近感を抱かせるのは、何と言ってもあの言葉のおかげである。そう、「モッタイナイ」である。

 2005年に環境関連の行事に出席するため来日した女史は、日本人が日常的に使っているこの言葉を知る。女史によれば、「モッタイナイ」という語は、消費削減(リデュース)、資源再利用(リサイクル)、再使用(リユース)、修理(リペア)の循環型社会を形成する“四つのR”の意味をたった一言で言い表すことのできる、世界で類例のない言葉なのだそうだ。

 ほぼ全量を輸入に頼っているくせに、その貴重な資源であるガソリンをジャブジャブと安売りし、隣の洗車場では、車がちょっと汚れただけで、アフリカの子どもたちを一度に何人も助けることができるほどの大量の清潔な水を、これまたジャブジャブと使っている。その上、同じ敷地の中にコンビニを併設し、そこからレジ袋や弁当の容器をわんさと排出している─そんな我が国の大型セルフスタンドは、マータイ女史から見れば、まさに“人類の敵”にさえ見えるかもしれない。我々業界人は、一抹の罪悪感を抱きながら商売しなければなるまい。

 マータイ女史でなくとも、思わず「モッタイナーイ!」と叫びたくなるようなことが、この業界にはたくさんある。例えば、今月1日、NHKが全国ニュースでガソリン価格の値上げを一斉に報じた。何億円もの費用がかかるであろう告知を、NHKがタダでやってくれているというのに、大型連休が明けるまで価格を据え置いたままのスタンドが少なからずあったようだ。他店を出し抜こうという浅知恵ゆえの愚行だが、結局、周辺のスタンドは皆同じ価格になってしまうのだから(日進市もそうでした)、大した増販効果は望むべくもない。それよりも、丸々一週間、だれも頼んでいないのに、値上げ分を丸かぶりして販売した損失はいかばかりか。モッタイナーイ!

 また、最近聞いた話だが、あるフルサービスのスタンドは、近隣のセルフスタンドに売り負け、販売量がジリ貧状態となっているため、セルフにしようかどうしようかと迷っているのだが、つい先ごろ、洗車機を新しく買い換えたのだという。何と8百万円!モッタイナーイ!そんなお金があったら、あと8百万円借り入れるか何かしてでも、セルフに改造すればよいのに。ちなみに、新型洗車機を導入した結果、それまで月額10万円だった洗車売上げが、20万円に倍増(!)したそうな…。

 セルフスタンドにも「モッタイナイ」と思える事柄が顕在している。いわゆる“日本型セルフ”と呼ばれるスタイルがそれだ。そもそも、無駄な設備や人員を抑えることで利益を生み出そうとするビジネス・モデルであるセルフスタンドに、過剰な期待とも言える設備投資をし、それを運営させるためにフルスタンド以上の人員を配置している現状は、ヒト・モノ・カネを無駄遣いしているとしか思えないのだ。

 世界の温室効果ガスの排出量は加速度的に増加しており、日本でもガソリンの販売量は年々抑制されてゆく“冬の時代”を迎えたと言って良い。にもかかわらず、まるで自分の店だけが右肩上がりで増販できるかのごとく安売りの永久運動を続けるスタンドや、コストセーブと逆行する過剰設備のセルフスタンドを建設している経営者には、マータイ女史に、「モッタイナーイ!」と一喝してもらいたいものである。

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